予選首位の村上茉愛(まい、21=日体大)は平均台での落下が響いて合計54・699点で4位に終わり、同種目の日本勢で09年ロンドン大会銅メダルの鶴見虹子以来の表彰台はならなかった。杉原愛子(18=朝日生命)は53・965点で6位。日本協会によると同種目で2人そろっての8位入賞は初めて。

 最終種目の床運動の点が表示されると、村上の目からぽろぽろと涙が流れ落ちた。14・233点は床運動の全体トップだが、合計点で表彰台に0・1点届かなかった。それだけではない。3種目目の平均台では落下で1点の減点。このミスがなければ金メダルに手が届いていた。「結果が悔しいという思いもあるけど、プレッシャーの中で実力を発揮できない自分が悔しい」と、しゃくり上げた。

 千載一遇のチャンスだった。リオデジャネイロ五輪の女子個人総合メダリストが不在。世界の顔ぶれが変わる中で、世界選手権に4大会連続で出場し、リオデジャネイロ五輪も経験した村上の知名度は高かった。パワフルな演技は開催地の観衆に大いに喜ばれ、人一倍の拍手を浴びていた。

 逃した魚は大きいが、予選1位の重圧を経験できたこと、落下した平均台の後に気持ちを切り替えることができたことには価値がある。日体大でも指導を受ける瀬尾京子コーチに「あさって(の種目別決勝)のためにアピールして来なさい」と、ハッパをかけられた床運動での演技には手応えをつかんだ。

 めったに褒めない瀬尾コーチに「よく頑張った」と言われると、涙がさらにあふれ出た。「大学に入ってから初めて先生とハグしたと思う。それが一番うれしかった。種目別だけでも金メダルを取って帰りたい」。決意を口にしたころには涙はもう乾いていた。【矢内由美子】