【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】世界9位の錦織圭(29=日清食品)の体が悲鳴を上げた。男子シングルス準々決勝で同1位のジョコビッチ(セルビア)と対戦し、1-6、1-4となったところで、右太ももの痛みで棄権した。

自身最多の1大会5セット試合3度の代償だった。しかも、2日前に4大大会自身最長5時間5分の死闘を演じたばかり。第2セット1-4となったところで、会場の自陣に目を向けた。そして、帽子を取った。天敵ジョコビッチに15連敗となった瞬間だった。「やり切れない思い。(ベスト)8を超えられないのは悔いが残る」と今年初めての敗戦を重く受け止めた。

第1セットの第3ゲームか第4ゲームの時だったという。「右足に鋭い痛みが起きた。ほとんどの動きが痛みに変わった」。1-6で落としたところでトレーナーを呼んだ。治療時間を取り、右太ももに真っ黒なテーピングをぐるぐる巻きにした。それでも「足1本では無理だった」という。

実は4回戦の第1セットから異変を感じ取っていた。ただ「足のいろんなところに来ていたが、痛みではなかった」。だから「どうにかなると思った」。それが痛みに変わり、力尽きた。

昨年のこの日、右手首の腱(けん)の脱臼から、米のツアー下部大会で復帰した。世界200位以下の選手に敗れ、苦しい戦いが始まった日だった。そして、ちょうど1年が経過した。途中棄権だったとはいえ、これで28日発表予定の世界ランキングは7位に上昇する。次戦は2月11日開幕のロッテルダムの大会を予定。錦織の19年の戦いはまだ始まったばかりだ。