ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(22=トヨタ自動車)がフリーもトップの198・70点を記録し、合計290・41点で初優勝を果たした。SP3位の田中刑事(25=倉敷芸術科学大大学院)が合計241・18点の2位となった。

演技を終えた笑顔の宇野が、サッとリンクサイドに目をやった。視線の先には年明けからメインコーチに就任した、06年トリノ五輪銀メダルのステファン・ランビエル氏(34)がいた。

「練習であんな演技、1回もしたことがなかったので、自分もビックリしたけれど『ステファン、どんだけ驚いているんだろう』って振り返って…。本当に僕が1人だったら、サルコーは絶対に入れていなかった。そこの、あと一押し。この試合で無難な演技をしに行く必要はなく、試合前は『チャレンジを楽しんで』と言われました。本当に、それがそのまんまできた」

冒頭に組み込んだ4回転サルコー。前日21日から「恐らく失敗するので、失敗した後、ちゃんとまとめたい」と正直に語ったジャンプだった。だが、自らの予想を覆して2・91点の加点を導き、鬼門を突破した。

「いやあ、ビックリですよね。その後をまとめることを考えていたんですけれど、サルコーを降りた時に『降りるんだ』って笑いながら、次のフリップ…」

試合前から「特に跳びたい」と誓った4回転フリップも成功。続く4回転トーループこそ着氷が乱れたが、最終盤まで高い集中力を保った。演技構成点は5項目全てで9点台(10点満点)。収穫は数多くあった。

「たとえ運が良かったとしても、ちゃんと試合で降りられた。サルコーの苦手意識が、少しでも薄れたらなって思います。今回はサルコーが跳べたこと以上に、それ以外をまとめられたことが、練習してきたことの成果。『試合を楽しむ』『挑戦を楽しむ』ことが、できた結果かなって思います」

メインコーチ不在で臨んだ今季は、5季ぶりにGPファイナル出場を逃すなど苦しんだ。だが、3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)を前に、ランビエル・コーチとの二人三脚で明るい光が差し込んだ。

「ここ2年間、世界選手権もあまりいい演技、いい結果が残せていない。いい結果を望むことはない。男子はレベルが高くて、僕がすごくいい演技をして、表彰台に乗れるかどうかのレベルだと思う。順位よりも、まずは練習をしっかり頑張りたい。試合は楽しんで、笑顔で今回みたいに(氷上から)帰ってこられたらなと思っています」

オランダで得た確かな自信を胸に、今季最大の舞台へと進んでいく。(エリーヌ・スウェーブルス通信員)