アメリカンフットボールで驚異の73ヤードFGを決めたキッカーがいた。Xリーグ、オービックのK/P山崎丈路(26)で、2日の練習で見事に成功させた。国内最長58ヤードを大きく上回る。自粛期間中の筋トレ効果で飛距離がグッと伸びた。

NFLでも64ヤードが最長記録で9ヤードも上回る。73ヤードとなると、最初にボールが置かれる地点はまだ自陣の44ヤード。防具も着けないでの練習だったが驚きの数字だ。FGは3ステップ。助走をつけるキックオフでは軽くエンドゾーン越えの80ヤードを蹴る。「FGもそれぐらいまでの余地はある」と話す。

2カ月あまりはボールをまともに蹴られなかった。自重トレを中心に、体をしならせるのに重要な背中を重点的に鍛えた。体重も3キロ増に「LBと思われる」と笑う。試合での自己最長は52ヤードだったが、6月に練習を再開すると70ヤードが普通に決まった。その瞬間も「自信あった。驚きはなかった」。

関西2部の大阪大でフットボールを始めた。4年の春にキッキング・クリニックに参加して「NFLを目指そう」と本気度が増した。17年に留年コーチの傍ら、エレコム神戸に練習生で入団。その後「今はこれにかけたい」と大学も中退し、今季は「目標へベストな環境を」と移籍した。

1月には米国で、NFLスカウトを前にしたコンバインでも好結果を出した。2月のカナディアン・フットボール・リーグの国内コンバインにも合格。5チームから接触があった。

今季のXリーグは10月に開幕を予定する。まだ見えないが「米国かカナダかもしれないが、びっくりするパフォーマンスを見せたい」。4大メジャーで唯一日本人が空白の最高峰NFL。第1号目指して、右足にさらなる磨きとパワーアップを図る。【河合香】

◆FGの距離 FGはOLが7ヤード後方にボールを投げ、キャッチしたホルダーが地面に置いてKが蹴る。FGの距離は、ボールが最初に置かれた地点から敵陣ゴールラインまでに、エンドゾーンの10ヤード、さらにプラス7ヤードとなる。

◆山崎丈路(やまさき・たける)1993年(平5)9月2日、大分市生まれ。大分上野丘高までサッカー部でサイドバック。大阪大文学部に進学し、勧誘されて入部してWR兼任。4年時に関西2部リーグ最優秀キッカー。エレコム神戸では2年プレーして移籍した。オービックが支援するスポーツジムVITA BASEでインストラクターを務める。173センチ、84キロ。家族は両親と姉2人。