58度の全国制覇を誇り、現校名で最後の出場となる能代工(秋田)の冒険が終わった。九州学院(熊本)に72-77で敗れて初戦敗退。中山玄己(げんき)主将(3年)が3点シュート7本を沈めて22得点、上村大佐(たいすけ、3年)も23得点と2人で量産も、勝利に届かなかった。中山は「自分たちの目標は日本一だったので、悔いはあるが、これからにつなげていきたい」。学校統合で来春から「能代科学技術」として再出発。改名後の来年以降も全国制覇に挑んでいく。

   ◇   ◇   ◇

早すぎる終戦だった。試合終了のブザーが鳴ると、能代工の選手たちは両手突き上げ喜ぶ九州学院とは対照的に、静かに敗戦を受け入れた。序盤から勢いに乗り、前半を44-33で折り返すも後半に失速。第4クオーター(Q)は25得点の相手に対し、わずか8得点しか積み上げられなかった。

67-65の同Q残り5分35秒でシュートを被弾。同点とされ、直後には勝ち越しを許した。72-75の同Q残り37秒、絶好調だった中山の3点シュートもわずかに入らず「最後に外してしまった自分の責任は大きい」と悔やんだ。

中山はチーム練習が終わると、自主練習で毎日500本以上のシュートを打ち込んできた。その成果を全国舞台で発揮し得点を量産。主将の意地は見せた。能代工での3年間を「濃いものだった」と振り返り、「これから校名が変わるが、今日も何本か自分たちの良いバスケットができたと思う。後輩はこういう姿を見ていると思うし、能代工業の伝統を受け継いでほしい」と思いを託した。

小野秀二監督(62)は「焦りが出て、キャプテンがチームを引っ張りながら、そこに呼応する選手が1人、2人いれば良かった」と総括。伝統校だけに注目度は高く「私の携帯はガラケーですけど、全国からばんばんメールが入ってます」と明かした。能代工での全国舞台は終わったが「やってること自体は1、2年生も継続していく。今年は1つの節目で、なるべく多くのゲームをしたいというのはあった。悔いは残るが、自力がまだなかった」。敗戦を糧に、カリスマ指揮官とともに新たな1ページを刻んでいく。【山田愛斗】