鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎)は2位だった。日本男子最年少18歳での頂点は逃したが、2年連続の銀メダルという結果は残した。

24日のショートプログラム(SP)は105・69点の2位。フリーはジャンプにミスが出て191・91点で、合計297・60点。先月の北京オリンピック(五輪)の個人戦で、日本勢最高の銀メダルをつかんだ際の自己ベスト310・05点には及ばなかった。

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シニア1年目の昨季は、この世界選手権で初出場2位。メダリスト会見では、初出場だった昨年の銀メダルと今年の銀メダルに対する気持ちの違いはどうなのか、まず司会から問われ、こう答えた。

「去年はホントに何も知らないというか、考えないまま世界選手権に来て。うれしさもありましたけど、何も考えていなかったですね。今季は、ホントに長くて濃い1年でした。最初から全然うまくいかなくて、自分のスケートを見失ってたり、うまくいかなかったりしたこともあったんですけど、やるべき目標をしっかり考え直して、さまざまな道のりを乗り越えて、ここまで来ました。最後に悔しさは残りましたけど、達成感はある。来季に向けての新たな1歩かなと。悔しさを来季にぶつけたい思いが強いです」

シーズン最終戦こそ不完全燃焼の思いはあるが、先月の北京オリンピック(五輪)では個人で銀、団体では日本初の銅メダル獲得に貢献した。

競技を終えた後も、モチベーションは衰えない。燃え尽きる年でもない。大会の中盤から終盤にかけ、北京の練習リンクでは連日、鍵山と宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が世界選手権に向けて、競うように曲かけ練習し合う姿があった。

鍵山はSP「ウェン・ユア・スマイリング」とともに、この日の勝負曲「グラディエーター」を磨き上げた。帰国後も、今春から進学する中京大のリンクで宇野とジャンプ、スピン、ステップ、スケーティングの向上を図った。

そのまま宇野と世界一の座を争うことになったモンペリエ。「練習の鬼」「圧倒される」と尊敬する先輩とのハイレベルな試合で、開始2本目に挑んだ4回転ループを降りることができなかった。

ただ、後悔はない。「ループに挑戦できたことは、これからの経験になると思います」。五輪後は調子を落としていた3種類目の4回転ジャンプに挑戦することで、来季への目標が明確になった。

「毎シーズン、限界値を上げていく。挑戦は変わらずしていきたい。ただ、今季は新しく入れたループがうまく決まらず終わってしまったので。まずはしっかりと練習して、あとはもう1種類、フリップかルッツか分からないですけど、やってみて、増やしていきたい。SPもコンビネーションを後半に持ってきたり、やれることはある。たくさんやっていきたいです」

この日は最後のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が1回転半になり、3回転フリップに付けるセカンドが3回転ループから2回転トーループになる、めったにないミスもあった。

悔しさは募るが、前を向く。「今季はホントいろいろあって。迷いとか苦しさがあったんですけど、ジャンプとか滑りを徐々に取り戻せた。新たなスケートの形ができた。来季こそ自分の演技に対してリベンジできるように、ノーミスできるように、頑張りたい」。

今大会は、昨年まで3連覇中で北京五輪金メダルのネーサン・チェン(米国)や、ソチ&平昌五輪2連覇の羽生が出場を辞退していた。その中で「自分のやるべきことをやれば点数と結果はついてくる」と自信を見せていた鍵山にも、分かってはいたが、まだ壁があった。

「まだ今日の宇野選手の演技は見られていないんですけど、あんなに(キス・アンド・クライで)喜んでいる宇野選手を見るのは初めてだったので、相当いい演技をしたんだろうなと。僕には分からないんですけど、相当な苦労があったんだと思います。あれだけキスクラで喜べるような苦労が。これからも宇野選手を追いかけたい。次の大会で一緒に滑るのが楽しみ。どれだけ成長したか、どれだけ近づけたか。早く練習して試したいです」

次の26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪で「金メダルを目指す」と公言している次代のエースは、この悔しさを生かす。来季以降、さらに羽ばたくための助走にする。【木下淳】