救世主は「ユニクロ」だった。

男子6位の友野一希(セントラルスポーツ)が緊急事態にも動じず“フランス出張”を完遂させた。

今季のエキシビションは「ビルズ」。サラリーマン風の衣装を着て、大会開催地に“出張”するイメージで演じている。

だが、今回ばかりは勝手が違った。

前週のプランタン杯(ルクセンブルク)に出場するため、飛行機を降りたドイツ・フランクフルト。そこで三浦佳生(東京・目黒日大高)が故障のため代表辞退し、繰り上げ出場することを聞かされた。エキシビションが行われない同杯出場後に、欧州を移動してモンペリエ入り。当然、衣装も持っていなかった。

「出張用の衣装がなくて、どうしようと思って…。衣装は全部ユニクロなので『ユニクロがあったらお願いします』と(関係者に頼んだ)。さっき、やっと衣装が届いたんです。取れない眼鏡も用意できない。裾上げも。はさみで『バーッ』と切ると思うんですが、今回はちょっと面白い感じになるんじゃないかなと。心配なんですよね。いつもネクタイも止めているんですが、止めるものも調達しないといけない」

エキシビション前の一夜明け取材では、そう不安を口にしていた。

だが、本番ではスーツケースをリンクに持ち込み、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も決めて、会場は大盛り上がりだった。

「行きの空港で言われたから、服も足りないし、どうしようと思ったんですけれど、何とかなって良かった。(関係者が)同じ物を選んでくれたので『ユニクロすげぇ』って…。どこに行っても同じ。用意してくださって感謝しています」

ちなみに国際大会の繰り上げ出場は5度目。周囲から「代打の神様」とも言われる。その受け止めは…。

「最高の褒め言葉です。阪神ファンなので。あとは『代打』を抜いて『神様』になればいいので。(世代は)桧山選手です」

歴代多くの「代打の神様」を生んだ阪神。桧山進次郎氏(日刊スポーツ評論家)の名前を出して場を和ませ、大観衆の前で堂々と演じきった。(モンペリエ=松本航)