関東対抗戦1位の帝京大が同3位の早大を圧倒し、2大会連続11度目の大学日本一に輝いた。

20年度に天理大が記録した55点を上回る決勝最多得点で、高めた地力を証明した。CTB松山千大主将(4年=大阪桐蔭)は涙を流し「仲間のために、チームのために全力でプレーをする。それを1年間やってきました。今日、メンバーもそうですが、今まで一緒に戦ってきたメンバー外も戦ってくれた」と感謝した。

リードを奪われても、強みを信じた。前半2分にSO高本幹也(4年=大阪桐蔭)のトライとゴールで先制。だが2連続トライを許し、7-12と追う展開になった。ノックオンや反則など浮足立つ場面があったが、原点に立ち返った。

22分には相手ゴール前でシンプルにラックから1つのパスで突進を繰り返し、フランカー青木恵斗(2年=桐蔭学園)が同点トライ。高本幹のゴールで勝ち越すと、NO8延原秀飛(3年=京都成章)、WTB高本とむ(3年=東福岡)がトライで続き、前半を28-12で折り返した。

後半は最初の得点をPGで許したが、6分にプロップ上杉太郎(3年=熊本西)が力強い突破でトライ。主導権を手渡さず、大学日本一を告げる笛を聞いた。

秋の関東対抗戦、全国大学選手権を無敗で駆け抜けた。頭一つ抜けた存在として他チームからも見られていたが、1つの転機があった。

22年5月29日、静岡・エコパスタジアム。関東大学春季交流大会で、前年度の全国大学選手権決勝で破った明治大に26-35で敗れた。

先発していた主将のCTB松山は仲間に語りかけた。

「この悔しさを絶対に忘れずに、1年間やっていこう」

新チーム発足以降、部内に手応えがあった。松山は「去年優勝してシーズンに入って、どこか『強いんじゃないか』という認識があった」と振り返る。だが、自慢のスクラムで思うような展開に持ち込めず、5点リードの後半36分から2トライ献上で逆転された。後半から出場し、この日の早大戦で先発したプロップ上杉は「セットプレーでやられた。責任を感じた。こだわり、努力しないといけない」とFW全体の思いを代弁した。

スクラムは一貫性を意識し、元日本代表で就任1年目の相馬朋和監督の指導を受けながら地道に強化した。準決勝で筑波大を圧倒しても、上杉は「まだまだ」と日本一に輝いた前チームの先輩の背中を追い続けた。部員は最上級生について「熱い」と口をそろえる。スクラムの柱になった左プロップの高井翔太(4年=常翔学園)は「いい学年に恵まれた。1年生の時は個が強くて、みんな『我が我が』となっていた。3年生の途中から熱が出始めて、4年生になってみんなで切磋琢磨(せっさたくま)して頑張ってきた」と夏、秋、冬の歩みに胸を張った。

前人未到9連覇から昨季は4大会ぶりの優勝をつかみ、浮き沈みを知る4年生は2連覇でバトンをつないだ。SO高本幹は「強いFW、支えてくれるBKもいる。その支えがあって、この(決勝最多)得点になっている。FW、BKに感謝したい」と力を込めた。登録メンバー23人中、下級生は15人。思いは引き継がれていく。【松本航】