休養期間を経て、今春から復帰した樋口新葉(22=ノエビア)は、新たな自分を演技に重ね合わせていく。

22年北京五輪(オリンピック)で団体銅メダル、個人5位をつかんだが、その後は右腓骨(ひこつ)の疲労骨折の影響もあり、昨年10月にシーズンの全休を発表。約半年の休養期間を挟み、4月1日から本格的に練習を再開した。

シェイリーン・ボーンさんによる振付の新フリー「Fix You/Paradise」では、その時々の感情を表現する。

「最初の半分はちょっとマイナスな気持ちから入る部分なんですけど、最後のステップは自分が滑っていて楽しいとか、その時、思っている気持ちをたくさん出したいと思っています」

288日ぶりの実戦復帰となった2日のアクアカップ(千葉)でのフリー同様、この日の練習でも後半で笑みをたたえて滑走した。

過去の自分との違いも感じている。かつては「がむしゃら」に駆け抜けてきたが、今は可能性が広がっていく瞬間に立ち止まることが多くなった。

「今も強い気持ちではあるんですけど、1個1個を積み重ねていって『こういうことも出来るようになった』とか、そういう面白さにあたらめて気付くことができていると感じています」

それが体現されていたのが公開練習の最終盤。終了のアナウンスが流れても、3回転ループに挑む姿があった。4度目にしてようやく着氷させた時、笑顔を浮かべながら、練習を終わらせた。

「自分が今まで感じたことないような面白さや楽しさがすごく大きい」

自分に新たな一面を感じている今、これから作り上げていくショートプログラム(SP)でも、ささやかな達成感を積み重ねていく。