男子200メートルバタフライで21年東京五輪銀メダルの本多灯(22=イトマン東京)が2大会連続五輪代表に内定した。1分54秒18の2位で、派遣標準記録(1分55秒27)を突破。日大の後輩で優勝した寺門弦輝(セントラルスポーツ)に続いた。金メダルに輝いた2月の世界選手権前に左足首を捻挫。18日の400メートル個人メドレーでは予選落ちしたが、苦しい状態で地力を示した。男子200メートル背泳ぎでは日本競泳界初の5大会連続五輪を目指す入江陵介(34=イトマン東進)が、全体2位で22日の決勝に進んだ。

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パリ行きを祝福するボードを持ち、本多は優勝した寺門の肩を引き寄せた。「もう突っ込めるだけ、突っ込んでやろうと思った」。スタート台に立つ前の表情は“諦め”の笑み。150メートルで1分22秒99と寺門に1秒以上の差をつけたが、最後はまくられた。悔しさはある。それでも「苦しかったですね。代表権を取れたことをよしっ!、と思いたい」と自分を褒めた。

約1カ月前、ドーハの地で初の世界王者に輝いた。世界記録保持者のミラク(ハンガリー)や、昨夏の世界選手権を制したマルシャン(フランス)は不在。それでも大会前に左足首を痛めながら頂点は譲らず「本当に高いところから景色を見られた」とかみしめた。本命種目を背負う自覚は強い。前日20日は予選を全体2位通過。個人メドレーの予選敗退からくる恐怖心と向き合うレースだったが「日本でこの種目を引っ張っている1人としては、予選も1位で通過したかった」とプライドをにじませた。

3年前の東京五輪は大学1年生。怖いもの知らずで世界の舞台へ飛びだし、銀メダルをつかんだ。追われる立場となり、東京五輪以降は国内負け知らずだった。この日「本当に価値ある負けだと思います」と振り返り、寺門とパリへ向かう。

「3年前、2年前、1年前、ドーハ(2月の世界選手権)より(地力は)格段に上がった。目指しているものは日本の中ではない。ちゃんと前を見て、自分がやれることを、もう1度ちゃんと、再認識していくことができると思います」

目標は金メダル。その権利をたぐり寄せた。【松本航】