21年東京五輪銀メダルの本多灯(イトマン東京)が、派遣標準記録を突破する1分54秒18で2位に入り、パリ切符をつかんだ。左足首に不安が残る中でも積極的なレースを展開。終盤に失速したが2位を確保し、日大の後輩、寺門弦輝(セントラルスポーツ)とともに代表に内定した。この日の本多の泳ぎを、16年リオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介さん(29)はどう見たか-。

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今大会の本多選手の泳ぎを見ると、やはり足首を痛めた影響は少なからずあったように感じた。とはいえ、そうした状態にあっても積極的にレースを運び、しっかり五輪切符を獲得した意義は大きい。

状態が良いときは、ラスト50メートルであそこまで止まったりはしない。両手運動で筋肉を大きく使うバタフライは、体力消耗も激しい。本多選手の強みは、それでも最後までバテないところにあるが、今大会では予選と準決勝も含めて最後に体力を失い、泳ぎが変わってしまうところがあった。それはつまり、けがの影響で持久力系トレーニングが不足していたことが関係している。

1分54秒18というこの日のタイムは、自己ベストから1秒以上遅い。海外勢からすれば、国内レースで競り負けて54秒台にとどまったことで、パリ五輪では自分にもチャンスがあると捉える選手は多いだろう。とはいえ、本多選手がしっかり練習を積むことさえできれば、本番まで伸びしろはたっぷりある。持ち味の爆発力を発揮できれば、当然ながらメダル獲得の可能性は十分ある。

若手の台頭が目立つ今大会だが、逆にいえば、ここまで実績のある選手の五輪切符獲得は少ない。ムードメーカーでもある本多選手がいることで、チーム全体がまとまりやすくなる。パリでは、日本のエースとして存在感を発揮してほしい。(16年リオデジャネイロ五輪金メダリスト)

 

 

◆萩野公介(はぎの・こうすけ)1994年(平6)8月15日、栃木・小山市生まれ。生後5カ月で水泳を開始。2歳で15メートル泳ぐ。作新学院中時代は計29回も中学記録を樹立。作新学院高-東洋大-ブリヂストン。五輪は12年ロンドンで銅、16年リオで金銀銅、21年東京は200メートル個人メドレー6位。同10月に引退し、22年4月から日体大大学院に進学。現在も400メートル自由形、200、400メートル個人メドレーの日本記録を保持する。