19年世界ジュニア覇者の岡慎之助(20=徳洲会)が合計172・264点で2位に入り、パリ五輪代表入りへ前進した。将来を期待され、中学校卒業後に実業団入りした大器はケガに泣かされてきたが、夢舞台を前に覚醒の時を迎えようとしている。既にパリ五輪代表に内定している橋本大輝(セントラルスポーツ)は、10連覇した内村航平以来の4連覇を達成。合計176・164点の圧勝で、2連覇がかかるパリへ収穫多いスタートを切った。橋本以外の4人の代表は5月のNHK杯(群馬)で決定する。

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155センチの小兵が、夢の五輪代表へ大きく近づいた。最終種目の鉄棒。岡は、武器の倒立でミスはありながら着地を決めた。少しだけうなずき、左腕で力強くガッツポーズ。電光掲示板に「2位」と表示されると、競技中とは一転、かわいらしい笑みがはじけた。

15歳で強豪・徳洲会に入団した異色の経歴を持つ。19年に世界ジュニア選手権で優勝し「日本の宝」と大きな期待をかけられた。2年前の全日本選手権では予選を3位通過。優勝圏内にいながら、決勝で右ひざの前十字靱帯(じんたい)完全断裂し、あと1歩のところで代表メンバー入りを逃していた。

身長130センチ台で入団し、今でも「しんちゃん」とチームメートらからかわいがられる存在。一方で、チームの看板としての振る舞いを求められる中で自覚が不足していた。しかし、右ひざ負傷による8カ月のリハビリ生活をへて意識が大きく変化。「誰にも負けない。勝つことにこだわる」。競技から離れた時間が、勝利への渇望を生み、五輪への思いもより強くした。

この日は緊張から2種目目のあん馬で落下したが「次に集中」とすぐに切り替え、2位となった。優勝の橋本には3・900点差をあけられたが、得意のつり輪と平行棒では上回った。村田コーチからも「ノーミスなら橋本と戦える」と太鼓判を押された出来栄え。「1強」と肩を並べることも夢ではない。

星槎国際高時代のクラスメートはフィギュアスケートの鍵山優真。22年北京五輪で銀メダルを獲得した同級生を見て「置いていかれた」と感じたという。あれから2年。5月のNHK杯で橋本を除く上位2人に入れば、パリ切符を手にする。「自分も(鍵山と)同じ舞台で活躍したい」。体操界のホープ覚醒のカウントダウンが始まった。【飯岡大暉】

 

◆岡慎之助(おか・しんのすけ) 2003年(平15)10月31日、岡山県生まれ。4歳でおかやまジュニア体操スクールで競技を開始。中学卒業後に徳洲会に入団。19年世界ジュニアで優勝。21年全国高等学校総合体育大会3位。得意種目はつり輪。155センチ。

▽3位萱和磨 (落下などの)大過失なく終えられたことが一番良かった。跳馬が少し危ない実施になった。NHK杯に向けて課題になる。

▽4位杉野正尭 (予選8位から4位と巻き返して)練習で積んできた演技が出せた。しっかりと(出場権を)つかみ取る。

▽5位土井陵輔 (床運動と鉄棒でミスが出たが)NHK杯で3位以内に入れるよう調整していきたい。

▽6位田中佑典 五輪に出るという気持ちが自分を強くしてくれる。(34歳で)よくやっていると思う。

 

◆パリへの道 男女とも出場枠は5人。男子は昨秋の世界選手権で個人総合2連覇の橋本が既に決定し、NHK杯で上位2人を選出。残り2人はチーム貢献度で決まる。女子はNHK杯の上位4人とチーム貢献度で1人が代表入りする。貢献度は種目別のスペシャリストが有利。個人総合選出の選手とチームを組んだ場合に団体総合の得点が最も高くなる選手を選び、男子の1人はNHK杯10位以内。