22年北京五輪銀メダルの鍵山優真(22=オリエンタルバイオ/中京大)が、男子7・8級を制した。フリーのみで行われ、1番滑走で200・54点をマーク。来月のグランプリ(GP)シリーズ初戦となる第4戦NHK杯(大阪)へ順調な仕上がりを見せ、「すごくいい大会になった。積み重ねてきたので、楽しむ気持ちだけだった」と声を弾ませた。

アクシデントにも動じなかった。冒頭の4回転サルコーの着氷直後、「提出した音源が練習していたものと違っていた」と気づき、曲を止めた。予備音源を提出して、停止した箇所から再スタート。サルコーの着氷姿勢がやや乱れていただけに「ワンチャン(ス)最初から出来るかもと思った」と冗談めかして振り返ったが、その後も集中力を切らさなかった。4回転-3回転の連続トーループや単独の4回転トーループなど全てのジャンプを成功。「落ちついて練習そのままが出せた。ようやく技術と表現のバランスが取れるようになってきた」と手応えを得た。

ハプニングの裏には、鍵山サイドの徹底した追求があった。今季のフリーは、26年2月のミラノ・コルティナ五輪に向けて同国に縁の深い「トゥーランドット」を選択。数々の名選手が滑ったプログラムだが「自分らしさを追求していく」と、演技だけでなく音源にもこだわり抜いてきた。編曲を担当する米国の作曲家クリストファー・ティン氏に依頼し、幾度となくブラッシュアップ。今大会が今季の4試合目だが「フィーリングや会場の反響の仕方、音量などを本当に細かく調整してきた」と、現在のバージョンは既に「83」を数える。

冒頭のジャンプの後にボーカルが入る新バージョンは数日前に届いたばかりで、今回の手違いにつながったが、「同じものをただ繰り返すのではなく、良くも悪くも毎試合違った感情を乗せていろんな表情をしたい」と、細部まで思いを宿していく。

8月中旬に負傷した左足首の状態も、問題なし。「自分が今できることは、1日1日の過程を信じて進んでいくことだけ」。ミラノの夢へ、自分自身を探求していく。【勝部晃多】