<高校ラグビー:京都成章62-0新潟工>◇2回戦◇30日◇花園

 Bシードの京都成章(京都)が3年ぶりの7度目の花園で新潟工(新潟)に快勝発進した。攻めては10トライ、守っては花園通算20戦目で2度目の完封だ。昨秋、大病を患った湯浅泰正監督(50)を再び聖地に立たせたフィフティーンが、今度こそ初の日本一を狙う。

 ピラニアのように、京都成章が新潟工を襲った。開始早々、相手ライン裏をキックで突いてボールに殺到。反則をもらい、タッチを切る。敵陣10メートル前右ラインアウトからモールを一気に押し込んだ。開始1分で先制トライを奪った。

 15人が縦横無尽に走り回り、計10トライを量産した。新潟工のアタックは0点に封じ込んだ。「すごく可能性があるチーム。まあ2年間の悔しさもあるでしょうから」。湯浅監督は完勝を淡々と振り返ったが、胸中は熱い。同監督は昨年10月15日、死も覚悟する大病を患い、手術を受けた。入院約2カ月。花園の京都府予選決勝では指揮も取れず、桂に敗れた。

 NO8呉主将ら教え子たちは3月18日、恩師の50歳の誕生日にTシャツを贈った。「花園へ行きましょう!」「日本一になりましょう!」-。胸と腹の部分には部員全員がメッセージを書き込んだ。背中には大きく「50」。0の部分には、頭髪が少し寂しくなった恩師の似顔絵を描いた。

 「周りに心配かけるし『もう辞めた方がええか?』って思いはちょっとあった。でも、あれで、もう1回と腹が決まりました」。湯浅監督はこの日、Tシャツを着込んで花園に立った。

 持ち味の守備力が光った再出発ゲーム。「水牛に群がるピラニアみたいにね。本物は見たことないんですけど」と笑う指揮官とともに。古都のピラニア軍団が、約束の日本一に向け、泳ぎ始めた。【加藤裕一】