<高校ラグビー:尾道12-12大阪朝鮮高>◇準々決勝◇3日◇花園

 尾道(広島)は大阪朝鮮高(大阪第1)と引き分け、抽選で初の4強入りを果たした。

 さまざまな思いが交錯した。初のベスト4に進んだ尾道のフッカー山川遼人主将(3年)には笑顔はなかった。60分戦って同点で抽選へ。じゃんけんによる予備抽選で負けて残りクジで勝った。「喜ぶのは優勝してから。大阪朝鮮高の主将から頑張ってと言われたので、お前らの分までやってやると言いました」。相手に敬意を表して、優勝を誓った。

 前半は押されっぱなしで1トライを許した。後半リズムをつかみ2トライを挙げて一時は逆転。しかしロスタイムに同点とされる苦しい戦いだった。「ズルズルといきかけていたが選手らが体を張ったプレーを見せてくれた」。梅本勝監督(51)はそう選手をたたえた。9度目出場の尾道は花園で3度目の抽選だった。過去2度はともに春日丘(愛知)が相手で1勝1敗。前回抽選で勝利して進んだ90回大会3回戦で敗れた大阪朝鮮高にリベンジした。広島県勢としても1943年(昭18)の崇徳中以来、69大会ぶりとなる4強。梅本監督は「新しいステージにいけたのはありがたい。子供らはいろんな人の思いを背負っていってほしい」と奮起を促した。

 昨年8月、広島市北部で起きた豪雨による土砂災害で、チームで復興支援のボランティアに2度足を運んだ。泥をかき出したり、倒れた木を除去した。「自分たちに何ができるだろうかと考えさせられた。監督から『ラグビーをしたかった人もいたかもしれない。その人の分まで背負っていけ』と言われた」(山川主将)。初めて立つ準決勝の舞台の相手は優勝候補筆頭の東福岡。花園では前回まで2大会連続で敗れている。さまざまな思いを背負った尾道が、その力を全力でぶつける。【浦田由紀夫】

 ◆抽選方法

 同点でなおかつトライ数、ゴール数も同じ時に「次回出場権」を懸けて抽選を行う。両チームの主将によって(1)じゃんけんで予備抽選の引く順番を決める。(2)勝った方が先に封筒を引き「後引き」か「先引き」かを決める。(3)本抽選に移り、「次回出場権あり」か「次回出場権なし」が書いてある封筒を「先引き」の主将から引いて決める。今回は大阪朝鮮高の主将がじゃんけんに勝ち、予備抽選で「後」を引いて、本抽選で「先」に引いた尾道の主将が、次回の出場権を引き当てた。

 ◆広島勢の4強

 今回の尾道が戦後初。戦前は崇徳中が19回(36年度)20回(37年度)25回(42年度)の3大会で4強入りしたが、決勝進出はない。