<柔道:世界選手権>◇9日◇男子100キロ超級◇東京・代々木第1体育館

 男子100キロ超級の鈴木桂治(30)は、1回戦でヤヌシュ・ウォイナロビッチ(ポーランド)にまさかの1本負けを喫した。地元日本での晴れ舞台。04年アテネ五輪100キロ超級の金メダリストが初戦で、まさかの1本負けだ。「分かんないです…。信じられないです…」。流れる汗をふきもせず、うつむいたままで言葉を振り絞った。

 相手のウォイナロビッチは、2メートル級の巨漢だった。鈴木の背中を持って、力でつぶしにかかった。「ああいうふうに来るのも分かっていた」。今年5月にリオデジャネイロで行われたグランドスラム準々決勝で対戦し、鈴木は1本勝ち。この日も、鈴木は、足技を使い、崩す作戦に出た。

 しかし、これが裏目に出た。鈴木が後ろに下がり、自分から技を出そうとした瞬間、逆に小外掛けを合わせられた。「相手は体の重さがあるが、それを受けてしまった自分が悪い」。場外際だったが、判定は1本負け。「まだ夢であってほしいです」とぼうぜんだ。

 鈴木にとって今大会は、世界の舞台でもう1度頂点に君臨するための試金石だった。最近は優勝がなく、同じ階級の高橋や世界1位のリネールにも分が悪い。「先は見えない。負けたのが信じられない」。ロンドン五輪に向け、鈴木のトンネルは出口が見えない。【吉松忠弘】