<大相撲春場所>◇3日目◇16日◇大阪府立体育会館

 大関とりの関脇把瑠都(25=尾上)が、会心の3連勝スタートだ。先場所敗れている小結稀勢の里(23)を寄せ付けず、強烈な突きで攻め立てて押し倒した。序盤戦のヤマ場ともいえる一番を制し、大関昇進へ出だしは順調。「規格外」のパワーだけでなく、2月にはプロ野球元オリックス清原氏らが師事したトレーナーのケビン山崎氏のもとで敏しょう性を身につけるトレーニングを積み、スケールアップした。

 装っていた無表情が、支度部屋で崩れた。土俵上、花道でも口もとを引き締めていた把瑠都は風呂場の前で大きく息を吐いた。「ヨシ!

 フーン!」。みなぎっていた気合は、なかなか抜けない。かつてはともに「大関候補」と呼ばれた稀勢の里を、わずか3秒3で一蹴。大関昇進へ、まずは第1関門を突破した。

 「優しさ」を捨てた。稀勢の里には先場所2日目に敗れた。「毎場所、四つに組むから。『優しい相撲』を取っているから、ちょっと変えた」。立ち合いで強烈なもろ手突きを見舞うと、間髪入れずに左で突いた。たった3発で、167キロの稀勢の里を土俵際に追い込む。突き落としを狙って左へ動いた相手も、逃さなかった。巨体を素早く寄せて「慎重に。慌てないように」。無傷3連勝は、6連勝した昨年初場所以来7場所ぶりだった。

 「規格外」のパワーに加え、さらなる進化を目指す。場所前の2月には、元オリックス清原らが師事したトレーナーのケビン山崎氏のジムに通った。狙いは、より俊敏に動けるためのスピードアップ。同氏には左ひざを痛めた07年から指導を受けるが、今回は約2週間、集中的にトレーニングを積んだ。

 25度の傾斜道を走り込む。ボールを足に挟んで腹筋する-。ケガをしない体づくりとともに、自身の188キロの体に負荷をかけながら体幹を鍛え抜いた。「大阪に来る前に、しっかりと体をつくったから。筋肉の質は変わってきたと思う」。2日目も豪栄道の速い動きに対応した。成果以上に、厳しいトレーニングをやり抜いた自信が収穫だ。

 武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は「スゴイね。先場所負けてたから気合が違った。相撲にならないくらい一方的だ」と驚いた。大関昇進へは「優勝争いしての13勝以上」がノルマ。高いハードルではあるが、9戦全敗だった元朝青龍関がいなくなった追い風もある。「まだまだですね。思い切り前に出るだけ」。強くて速い把瑠都は、32センチの足で「大関ロード」を踏みしめている。【近間康隆】