<大相撲夏場所>◇5日目◇16日◇東京・両国国技館

 横綱日馬富士(29=伊勢ケ浜)が、序盤5日目で痛恨の2敗目を喫した。小結栃煌山(26)に肩透かしで敗れた。9勝止まりだった先場所に続く不振に、審判部長として土俵下から見つめた師匠の伊勢ケ浜親方(52=元横綱旭富士)からは愛のムチも飛んだ。横綱白鵬(28)ら4人が全勝を守った。

 頭の中の混乱ぶりを示すようだった。両膝と両手をついた日馬富士が、土俵上で顔をしかめた。何度も首をひねった。支度部屋に戻ると「負けは負け。明日から頑張ります」「気持ちを切り替えて頑張ります」「これからだから、頑張ります」と、無表情で繰り返した。

 スピードが武器の横綱が、瞬時に反応できなかった。右を巻き替えてきた栃煌山に、反撃が遅れた。慌てて首投げを仕掛けたが、威力はなし。動きが止まった直後、肩透かしを食らった。平幕の妙義龍に金星を配給した2日目に続く黒星で、序盤5日間で痛恨の2敗目。9勝に終わった先場所と同じペースだ。

 審判部長として土俵下から見守った師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「やっぱり頭をつけないとだめだ。集中力を欠いている」と指摘。自己最重量の134キロで今場所を迎えたことにも「ちょっと太ったくらいで勘違いしやがって」と厳しかった。先場所に続く不振に、横審の高村正彦委員(71=自民党副総裁)も「大関だって9勝だったら『クンロク大関』って言われる。横綱はそれより多くないと。10勝、2ケタは最低ライン」と苦言を呈した。

 両足首痛に加えて場所前には右肘も痛めた。稽古不足は否めず、この日も朝稽古はしなかった。午前10時ごろ、誰もいない稽古場に顔を出した師匠が「何だ。もう終わってしまったのか」と嘆くのも仕方ない。だが、土俵に上がる限り勝利を求められる地位にいる。伊勢ケ浜親方は「横綱だから稽古できてなくても頑張らなくちゃいけない」と“愛のムチ”で奮起を促した。流れを引き寄せるためには、気力を振り絞るしかない。【木村有三】