第88回選抜高校野球大会(3月20日開幕・甲子園)への出場が決まった札幌第一が30日、全体練習を行い、本番へ向けて本格スタートした。甲子園のベンチ入りを狙う宮井健男捕手(1年)は、宮城県気仙沼市出身。11年3月11日の東日本大震災で家を失い、移住先の札幌で夢舞台への切符をつかんだ。

 5年前、授業中に大きな揺れを感じた。母と自宅へ戻り、同居していた祖父母と弟の5人で車に乗り込んだが、既に道は大渋滞。がれきをのみ込み黒い塊と化した巨大な波が、迫っていた。「このままじゃ、間に合わない」。母は幼い弟を抱き、宮井は祖父母の手を引いて、高台に続く坂道を必死で走った。

 海から1キロほどのところにあった自宅は、あっと言う間に津波にのまれた。少年野球のグラウンドは跡形もなくなり、野球道具も公式戦初のホームランボールも冷たい波にさらわれた。後日、隣の席の同級生が犠牲になったことを、知った。

 その年、小6の5月に父が以前、勤務していた札幌へ、祖父母と別れて移住。「言葉も違うし学校生活にはなじめなかったけど、野球をしていることで友人はすぐにできた」。昨秋の全道大会ではメンバー外も、直後の明治神宮大会では故障者に代わり背番号15でベンチ入り。「今も気仙沼に住む祖父母に、甲子園でプレーする姿を見せたい」。離れ離れになった祖父母や友人に晴れ姿を見せるためにも、全力で背番号を狙いにいく。【中島宙恵】