高校の部は、早実(東京)の清宮幸太郎内野手(2年)が日本一に王手をかけた。3回に無回転のライナーが二塁手を強襲する二塁打を放ち、チームの全4四死球を受けて5打席連続出塁。福岡大大濠(九州・福岡)を破り、36年ぶりの決勝進出を決めた。履正社(近畿・大阪)は、高校通算43発の安田尚憲内野手(2年)に今大会初安打が出て初の決勝進出。今日15日の決勝は、東西の注目スラッガー対決となった。

 清宮の「ブレ球ライナー」が、二塁手を吹き飛ばした。3回1死、3ボールから内角直球を振り抜いた。サッカー日本代表FW本田圭佑(30)が得意とするフリーキックのように、無回転のボールが急激に変化した。福岡大大濠の斎藤友哉二塁手(2年)はグラブには当てたが、捕球できずに転倒。清宮は「今までにない打球。すごく動いていた。自分でもビックリするところに行きました」。右中間へ転がる二塁打となり、観客の度肝を抜いた。

 打球の速さとミート力が生んだ「珍現象」だった。清宮は「ちょっと打ち損じて、詰まりました」と言ったが、強烈な当たりを二塁手の右側に飛ばした。捕球しようとした相手の手前で左へ曲がる、予測不能の軌道だった。

 規格外の打球は、視察した8球団のスカウトも驚かせた。中日中田スカウト部長は「真芯でつかまえると無回転になる。フォークボールと一緒」と説明した。ソフトバンク山本スカウトは「松井(秀喜)さんもそうだったけど、バットに当たった時の音が違う。(元西武)カブレラのようなライナーだった」。日本が誇る本塁打打者と、日本で通算357発を放ったスラッガーを例に出した。

 清宮が塁に出れば、得点が入る。この日は1人でチームの全4四死球。今大会9打席は3安打5四死球で、出塁率は驚異の8割8分9厘だ。「打撃の調子はまだ5割くらいですけど、(4番の)野村の前に出塁できたのが良かった」。公式戦6試合、27打席ホームランが出ていなくても、主将はチームの勝利を喜んだ。

 決勝進出はヤクルトなどで活躍した荒木大輔氏(52)を擁して準優勝した80年以来36年ぶり。高校初の日本一をかけ、履正社・安田との初対決に臨む。「体は自分のほうが小さいけど、プライドとか意地がある。力負けはしない」。同じ左の長距離砲を倒し、早実を40年ぶりの頂点に導く。【鹿野雄太】