虎の守護神が、しばし久しぶりの「スッキリ」に浸った。全セの呉昇桓投手(33)の球宴初マウンドは祭りを締めくくる9回表に訪れた。いきなり西武森と対決だ。直前の打席で豪快に右翼へアーチを放っていた。4球目、右翼ポール際に大ファウルを飛ばされても動じない。左飛に抑えると後続もオール直球勝負で左翼にフライアウトだ。3者凡退。この響きこそクローザーとして君臨できる、よりどころだろう。

 呉昇桓が「ヒットも打たれず、失点もせず、良かった。オールスターで投げられて気分転換になったし、後半戦にいい投球をするキッカケになった」と胸をなでおろすのも無理はない。目下7試合連続で安打を許していた。7月は3、4日のDeNA戦(横浜)で後藤に2戦連続で被弾するなど、月間防御率8・53の惨状。和田監督も「横浜で2試合やられてから乗り切れていない感じがする」と心配する不調ぶりだった。中西投手コーチも「腕がちょっと横振りになっている。縦に投げられていないから抜けるというか」と話していた。球威も戻り、最速150キロ。完全投球が何よりの球宴みやげになった。

 15日は33歳の誕生日。広島戦の登板後、仲間たちから祝福された。スンファンは「韓国から友達がいっぱい来たんだ」と笑う。タテジマのユニホームで投げるイラストで飾ったケーキに喜び、杯を交わした。「爆弾酒さ…」。ビールと韓国焼酎を混ぜた強烈ドリンクを飲み、休息を楽しんだ。

 猛暑を乗り越えるモットーがある。熱をもって熱を制す-。韓国の食における考え方の1つだ。熱々の料理を食べて、暑さを吹き飛ばす。スンファンもまた、大好物のスンドゥブチゲをぺろりと平らげるなど、真夏の処世術を心得る。この日、和田監督は「久しぶりやな、3人は。レフトに3つ、打たせられへんで」と声をはずませた。球宴で悪循環を断ち、熱々の投球で頂点を狙う。【酒井俊作】