2015年も多くの選手が球界に別れを告げた。「さよならプロ野球」で新たな人生を歩み出した元選手を紹介する。

 「清原2世」と呼ばれた男が転機を迎えた。ソフトバンクの勧野甲輝内野手(23)。今月から九州三菱自動車の正社員となった。元ソフトバンク帆足らを生んだ社会人チーム。練習は午前中に行われ、午後からは車の営業員として働く。現在は研修を受ける毎日だ。

 15歳で全国の注目を集めた。1年生で名門PL学園の4番を任されたからだ。「プレッシャーは半端じゃなかった。清原さんの名前を汚しちゃいけない…。でも、今だから言えますが、偉そうに、てんぐになっていましたね」。ケガにも泣かされ、2年春の1度しか甲子園の土は踏めなかった。

 将来性を買われ10年ドラフト5位で楽天から指名された。3年間2軍暮らしが続き戦力外。14年からソフトバンクと育成契約した。今季は2軍では28試合だが、3軍でも64試合に出場した。「ホークスに来て試合に出る楽しさを知りました。試合でしか分からないこともある」。手応えをつかみかけていた9月、スイング中に右肋骨(ろっこつ)を骨折。リハビリ中のまま、戦力外通告を受けた。

 「甲子園で輝けるように」という思いを込められて「甲輝」と名付けられた。PL学園に通うため、小さいころに学校の近くへ家族で引っ越した。愛情を注ぎ続けた父雅央さん(54)は社会人で野球を続けることを喜んだという。

 高校時代、真っ先に声をかけてくれたのはソフトバンクだった。今回も現在、九州三菱自動車でコーチをしているホークスOBの山内孝徳氏から誘われた。福岡の地に残り、甲子園ではなく東京ドームや京セラドーム大阪で輝く星となる。【石橋隆雄】

 ◆勧野甲輝(かんの・こうき)1992年(平4)7月12日、大阪府生まれ。4歳から野球を始める。PL学園小では富田林リトル。富田林二中では富田林シニア。PL学園では1年夏からベンチ入りし、2年春は甲子園出場。高校通算27本塁打。2年夏はベンチ外。10年ドラフト5位で楽天入団。14年からソフトバンクでプレー。今季2軍成績は28試合、打率2割1分5厘、1本塁打、3打点。二塁、三塁を守った。182センチ、89キロ。右投げ右打ち。