試合序盤、広島打線は沈黙していた。だが6回、丸のソロが反撃の合図となり、目覚めた。7回の好機は生かせずも、8回は2死一、三塁から鈴木がボテボテの適時内野安打を放ち再び追い付いた。守備で流れを引き寄せた最終盤、菊池の強肩と勝負強い打撃が、試合を決めた。

 まずは守備。8回裏無死一塁から、大島の中堅越えの当たりでエルナンデスが一気に本塁を狙うと、丸から中継した菊池が約40メートルの遠投を見せた。捕手会沢へストライク送球で勝ち越しを阻止した。少しでもずれていたら勝ち越しを許していた。世界を知る黒田が言う。「20年プレーして、ああいう選手は見たことがない。メジャーでもトップクラス。一番は肩の強さ。肩が強い選手はいたけど、肩が強くてもあれだけ守備範囲の広い選手はいない」。この守備がチームに流れを呼び込んだ。

 9回。自分が作った流れに乗った。1死満塁でカウント0-2と追い込まれながら、しぶとく左前へ決勝タイムリーを放った。「苦しかったけど、みんなを信じて、絶対に逆転すると思っていた」。前日の同点打に続く勝負強さを発揮。緒方監督は「本当に成長してくれている。頼もしい」と最敬礼だ。

 チームは3夜連続、今季39度目の逆転勝利で3連勝。貯金は86年以来の今季最多27となった。マジックは16まで減った。緒方監督は「連日連夜、ベンチにいるメンバーも含めチームが一丸となって攻守に活躍し、勝ち取った1勝だ」とナインをたたえる。ミラクル勝利連発。まだまだ勢いは止まらない。【前原淳】