巨人の球団職員でウグイス嬢歴39年の山中美和子さん(59)が、11月の定年後に「専属ウグイス嬢」として契約更新することが29日、分かった。“プロウグイス嬢”の誕生は球団史上初めてで、最長5年の契約も見込まれる。山中さんはレギュラーシーズンの約1400試合で巨人戦の放送係を担当。栄光にも挫折にも寄り添ってきた名物ウグイス嬢が、来季以降も高橋巨人を支えていく。

 あの涼やかで優しい声が来年以降も、東京ドームから聞こえてくる。後楽園球場時代から巨人戦の場内アナウンスを務めてきた山中さんは、11月に60歳を迎えて定年退職の予定だった。だが球団は欠かせない“戦力”と判断。ファンからの現役続行を望む声も多く、初の専属契約を結ぶことになった。契約年数は1年ごとに見直され、現段階で最長5年まで見込まれている。「今の時代は65歳まで働く方もいらっしゃるじゃないですか。私も言っていただいてありがたいです」と目尻を下げた。

 39年間「変わらないこと」を使命とする。「お客さんにとっては、この1試合が初めての試合かもしれないし最後の試合になるかもしれない。選手にとってもそう。間違えず、いつも同じように言う。これが難しい」。キャリアを重ねるごとに重圧は増した。運営部課長として、試合前は球団事務所で精算などの業務をこなす。体力の消耗は激しくなり、「体がどんどんきつくなった。今年で辞めるつもりだった」が本音だった。だが引き受けた。「好きなことだからかな」。

 力まず、気を抜かず。絶妙な距離感で巨人に寄り添ってきた。最大11・5ゲーム差を逆転した96年や最大13ゲーム差からの大逆転優勝を決めた08年も、優勝を逃した冬の時期も、放送席から冷静に凝視してきた。

 だからこそ見える未来がある。高橋巨人は現在5連敗中。首位広島と11ゲーム差の2位と苦闘するが「もう1度黄金期に向かっていると思う。今年で(ウグイス嬢は)最後だと思っていたから来年も見られる楽しみがあります」と、一喜一憂しない。シーズンを最終戦まで、温かいまなざしを向けていく。【浜本卓也】

 ◆山中美和子(やまなか・みわこ)1956年(昭31)11月4日、神奈川生まれ。追浜高(神奈川)では野球部のマネジャーを務めた。高校卒業後、神奈川県高野連に就職。巨人の場内放送係募集に応募して採用され、77年8月から球団職員としてウグイス嬢を務める。現在は運営部課長。印象に残る選手は「王さん、中畑さん、阿部選手ですね」。腹筋50回と発声練習を日課にする。