巨人のルーキー重信の韋駄天(いだてん)ぶりが、福井の黒土の上に刻まれた。1安打2四球でプロ初盗塁を含む2盗塁。3出塁すべてを得点に絡めた。

 20メートル走で2秒42。「神の足」と形容される鈴木の2秒39に肉薄する。キャンプ、オープン戦で縦横無尽に走ったが、シーズンに入り「勝負を大きく左右する場面が増えた」と1歩を踏み出せなかった。過去18試合で1度しか盗塁企画できず、失敗に終わっていた。

 「思い切りしかない。走らないと何も意味がないし、一塁にずっといてもしょうがない」。2度の2軍降格での決意を実行に移した。初回1死一塁から二盗に悠々と成功。5回無死一塁でも坂本の初球に決め、さらに捕逸で無死三塁の状況をつくり、坂本の適時打を呼び込んだ。

 次の塁を狙うスピード感とは対照的に準備はスローをモットーにした。2軍では試合前練習を終えると20分で休憩を切り上げ、洋楽のノーランズなどを聴いて精神統一を図り、素振りも行った。「気持ちを落ち着かせて試合に入りたかった。1軍にいた時は思った以上に気持ちの整理ができないまま試合に入っていたので」。出塁した時、すでに心は整っていた。だからこそ勇気ある1歩を踏み出せた。【広重竜太郎】