一山越えたルーキーが、せめてもの希望だった。阪神ドラフト1位高山俊外野手(23)が3番左翼でフル出場。5打席立ってシーズン規定打席443をクリアした。左腕バルデス相手に左前打と中堅フェンス直撃二塁打と会心の2安打。新人王最有力候補として、逆転のCS進出までチームを押し上げる。

 「ドスン」。ナゴヤドームに鈍い音が響いた。4点を追う5回1死。高山は中日バルデスの初球、外角高めスライダーにロックオンしていた。鋭い眼光で射抜いたボールに逃げ場はない。両腕をしならせ、バットの真芯で捉えると、打球は弾丸ライナーで中堅フェンス最上段にぶち当たった。

 「あの打席はスライダー一本で待ってました。結果、良かったと思います」

 あと数十センチ上なら、バックスクリーンに飛び込む本塁打となっていた。中堅大島が何度もフェンスを見返す光景が、二塁打となった打球の異質さを物語っていた。

 この日の5打席で、プロ1年目の今季445打席となった。シーズン規定打席の443に到達。球団の新人野手では01年の赤星以来15年ぶり、2リーグ制以降では史上10人目だ。その443打席目を、衝撃のフェンス直撃二塁打で飾るところが、なんとも新人離れした高山らしいところだ。

 計77打数27安打の打率3割5分1厘。これは外国人投手を相手にした時の成績だ。この日もチームが苦手とするバルデスから、マルチ安打。7月18日の巨人戦では、猛虎の天敵マイコラスから猛打賞を記録するなど、虎のルーキーは外国人キラーとしての一面ものぞかせている。「特別意識はしてないんですけどね」と本人は笑うが、阪神の前に立ちはだかる助っ投を次々となぎ倒す姿は、実に頼もしい。

 「あそこは惜しかったですけど、そういうの関係なくいろいろ振り返って悔しい試合でした。他の打席で納得いってないので」

 この試合、自らは一定の結果を残した。だが、チームが敗戦したことで、高山は笑顔なくバスに乗り込んだ。そう、全てはチームの勝利のため。試合になれば、プロ年数など関係ないことをこの男は理解している。【梶本長之】