西武岸孝之投手(31)が日本ハムの優勝に待ったをかけた。優勝へのマジック1で乗り込んできた相手を7回4安打無失点に封じ込めた。目前での胴上げを阻止し、9勝目をマーク。これが今季最終登板で、取得している国内フリーエージェント(FA)権の行使が注目される右腕が、2万7158人の観衆の前で存在感を見せつけた。

 大観衆を前にバッテリーで上がったお立ち台。岸は、女房役の炭谷から「今年は岸さんと組むのはこれが最後。来年以降も組ませていただければ」とお願いされると、思わず苦笑いを浮かべた。「今年もケガでチームに迷惑をかけてしまった。最後はしっかり投げたいと思っていました」。西武プリンスドームは、日本ハムの胴上げを阻止した右腕に、この日一番の大拍手を送った。

 優勝目前の相手の前に仁王立ちした。3回まで1人の走者も出さない完璧な立ち上がり。「初回から感覚がすごく良くて。自分のやるべきことをちゃんとやりたいと思ってました」。6回2死一、二塁で迎えた中田に対しては「思い切りいきました」と、今季最速150キロで追い込み、最後はスライダーで空振り三振。代打大谷に二塁打を許した7回2死二、三塁では、中島を内角146キロで見逃し三振。闘志は胸に秘め、表情を変えずに淡々とマウンドを降りる姿が、岸らしかった。

 登板前には緊張感に襲われた。「久々にものすごく緊張しました。今年最後だな、と思ったら自然と…。すぐに落ち着いたんですが」。全力で腕を振り、走者を出してもホームだけは踏ませない。今季最後のマウンドで、伸びのある直球と、スライダー、チェンジアップを的確に決める貫禄の投球で意地を示した。

 今季で3年契約が終わり、オフには取得している国内FA権を行使する可能性がある。試合後は「それに関しては(シーズンが)終わってから考えます」とだけ話した。残留を基本線に考えているとみられるが、権利を行使した場合は、複数球団が獲得に乗り出す可能性が高い。試合終了後の左翼スタンドからは「来年頼むぞ、岸!」の大合唱が響き渡った。決断が注目される右腕。「内容に結果がついて勝てたのはよかったです」という表情には、仕事を全うしたエースの風格が漂っていた。【佐竹実】