高山が最高のタテジマ新人になった。阪神ドラフト1位高山俊外野手(23)が1点を追う7回2死一、二塁で中前に同点適時打。135安打とし、球団の新人最多安打(98年坪井智哉)に並んだ。8回に勝ち越されたがすぐにその裏、2点を奪い再逆転勝ち。遅ればせながら? 今季初の5連勝で4位に浮上と、阪神ファンを幸せにした。

 その時、歴史は動いた。1点を追う7回2死一、二塁。高山はヤクルト平井の投じた2球目、外角152キロ直球を鋭く振り抜いた。打球はヤクルト平井のグラブをかすめ、センターへ抜ける。135回目のHランプを背に、クールな男がグッと拳を握った。

 「ずっと135という数字を聞かされていたので、1つの区切りとしてこられたのは良かったです。この甲子園のファンの前で達成できて良かったです」

 何かの運命なのか。1年前のちょうどこの日。高山は東京6大学の通算最多安打記録、127本に並んでいた。それから1年。タテジマに袖を通し、今度は98年坪井が記録した球団の新人最多安打に並んだ。この強運も、スターとしての資質だろう。

 さかのぼること3カ月前。福留が日米通算2000安打を達成した時に、ふともらした。「すごいですね。長くずっと試合に出続けられているということなんで。当たり前のようですけど、本当にすごいです」。試合に出続ける難しさ-。高山は誰よりもそれを感じていた。

 昨年10月。野球人生最大の大けが、右手有鉤(ゆうこう)骨骨折を経験した。リハビリに励んだ今春2軍安芸キャンプ。高山は右手首に残る手術痕を見つめながら、こう漏らした。「今でもまだ痕は残ってますね。これからも残っていくと思うんで、つらい時とかあれば、この時のことを思い返してやっていけたらいいですね」。明大野球部としての最後は、けがの影響でベンチの外で迎えた。試合に出られない悔しさ、チームの役に立てないもどかしさを知っている。だからこそ、金字塔を打ち立てても気を緩めることはなかった。「あと2試合を全力でやり通して、やっと1年だと思う。まだ振り返る段階ではないかなと思います」。

 チームは今季初の5連勝。ヤクルトをかわし4位に浮上した。立役者の1人になった黄金ルーキーの目は、次の戦いに向いていた。「坪井さんのように何年も結果を残してない。まだまだやっていきたい。今、打率が2割7分8厘。もう少し上げられれば」。高山のみに許されたオンリーワンへの挑戦権。残り2戦。高みを目指し、走り続ける。【梶本長之】

 ▼高山が7回の同点中前打で今季の安打数を135とし、98年坪井と並んで2リーグ分立後の球団新人最多記録に並んだ。高山は得点圏打率セ・リーグ2位の3割8分1厘で、殊勲安打(先制、同点、勝ち越し、逆転、サヨナラ)は15本目。主に1番打者だった98年坪井は6安打だった。