阪神金本知憲監督(48)が29日、北條史也内野手(22)の「アーチスト化計画」に乗り出した。試合用バットより重くて長い3種類のマスコットバットをプレゼント。秋季練習、キャンプで振りまくり、本塁打を量産できる選手になれというものだ。今季は5本塁打だが、鍛えればもっと打てると確信。現役時代からマスコットバットを愛用した指揮官が、1発のある1番に変身させる。

 甲子園室内の打撃練習中、金本監督が北條を呼び寄せた。「植田海が来たから(今年は)もういいよ。よう頑張ったな。お疲れさん!」。初めて1軍に合流した未来の遊撃候補、植田と交代? そんなどっきりジョークで引きつる? 北條に3本のマスコットバットを手渡した。

 あらかじめメーカーに頼んでいた2本は960グラム、90センチと980グラム、92センチの超重量型バットだ。試合で使っている905グラム、89センチと比べて重くて長い。さらに監督が現役時代に使っていたお宝の1本までプレゼント。早速フリー打撃で使った北條は、重さに振り回されるような形で懸命に打ち返した。

 金本監督 重いティー用のバットをね。長いのと短いのと。この秋しっかり振ってもらおうと思ってる。

 今季は2試合残っているが、来季優勝に向けた準備も本格化してきた。その1つが、北條の「アーチスト化計画」だ。177センチ、76キロとプロでは小柄だが、光星学院時代の夏の甲子園で1大会4発を放ったパンチ力に注目。特に今季終盤は「長打を狙えるカウントならいけ」と、1発狙いを勧め、北條も期待に応えて5本塁打中3本を9月に放ってきた。

 もっと振る力がつけば本塁打を量産できる。そこで贈ったのがこの秋、鍛錬するための超重量型バットだった。金本監督も現役時代、練習で1キロのバットを振り続けて鉄人になった。重い分、しっかりした形で振らないと良い打球は飛ばず、正しいスイングを体に覚えさせることもできる。

 北條 芯しか飛ばないし、ヘッドの重みを感じながら打てました。レベルアップしないといけない。

 重さに悪戦苦闘した北條も気合を入れ直した。今季の24二塁打は福留の25本に次ぐチーム2位。一方で、あと少しパワーがあれば柵越えという惜しい当たりも多かった。金本監督も「捉えるセンスはある。スイングする力がつけば本当に楽しみ」と期待は大きい。かつての真弓明信、今岡誠型の1発長打のある1番へ。秋の猛特訓で進化を目指す。【松井清員】

 ◆マスコットバット スイングスピードをつけるよう、試合用よりも重量のある練習用のバット。主に素振りやティー打撃で用いるものだが、金本監督は現役時代に約1キロの重量がある専用のマスコットバットをフリー打撃に使うこともあった。オフにウエートトレーニングで鍛えた体を「野球の動きが出来るように仕上げる」段階と位置づける春季キャンプで、マスコットバットを多用していた。