東北が生んだスラッガーがユニホームを脱ぐ。山形・天童市出身の楽天栗原健太内野手(34)が1日、コボスタ宮城で会見を行い、今季限りでの現役引退を発表した。広島時代に4番として打線を支え、通算153本塁打。右ひじの手術を繰り返したこともあり14年以降は1軍出場がなく、昨秋、楽天にテスト入団した。地元東北で再起をかけたがかなわず、17年のプロ野球人生に終止符を打った。

 引退会見は、笑顔で締めくくろうと決めていた。ただ、家族の話題になると、抑えてきた感情が栗原の目からあふれてきた。「いつも近くで支えてもらって。『ここまでやってくれたんだから悔いはないよ』と…」。涙をぬぐい、ファンや支えてくれた人たちに再度思いを伝えた。「けがをして、『引退』の2文字があった中、ダメになりそうなときも勇気づけられてここまできました」。プロ17年間の感謝の気持ちを目いっぱい言葉にした。

 引退は、9月に決断した。「この1年が勝負とやってきたが、自分の思うようなバッティングができず、戦力にもなれなかった。『ここが引き際かな?』と」。心情を吐露した。テスト入団とはいえ、チームからは長打を期待された。春季キャンプは1軍スタート。しかし、開幕直前に右ふくらはぎの肉離れと、今季も故障に悩まされた。新天地での1軍出場は果たせなかったが「スッキリしている。精いっぱいやったので悔いはありません」。すがすがしい表情で話した。

 17年間の足跡をたどればきりがない。広島時代の02年9月5日の阪神戦で、プロ初安打が初本塁打。08年の広島市民球場最後の試合では「理想通りの本塁打が打てた」。09年にはWBC日本代表として世界一を経験した。「全部が本当にいい思い出」と栗原は語る。

 「小さい頃から生活の一部として野球をしてきた。栗原健太を作ってくれたもの」。野球に最大限の敬意を表し、ユニホームを脱ぐ。楽天から2軍打撃コーチの就任を打診されているが「今はゆっくりしたい。イーグルスにはいい選手がたくさんいる。強いチームになってほしい」。みちのくが生んだスラッガーは後輩たちに夢を託し、コボスタ宮城に別れを告げた。【田口元義】