“先輩”に挑戦状だ。プロ野球ドラフト会議が20日、都内のホテルで開催され、今夏の甲子園を制した作新学院・今井達也投手(3年)は西武に単独1位指名された。西武には3年前の甲子園V腕、高橋光成投手(19)がいる。ともに未来のエース候補として期待される右腕に「投げ負けないよう頑張りたい」と負けん気をのぞかせた。

 西武の一本釣りが決まった今井が、自ら名前を出したのは同じ“肩書”を持つ先輩右腕だった。「高橋光成投手だったり、そういった投手に投げ負けないように頑張りたい。光成さんとは同じ看板を背負ってやっていく。お手本になる存在だと思います」。高橋光は前橋育英2年夏に甲子園を制した。V腕として負けじと、色紙に「開幕ローテ」の目標をしたためた。

 以前も手を伸ばす目標だった。高橋光が優勝投手の称号を得た翌年、作新学院グラウンドへ練習試合に訪れた。1年生の今井に登板機会はなかった。目の前でじっと日本一の投球を焼き付けた。1年後。栃木大会で投げながら甲子園でメンバー漏れ。「必ず来年、甲子園のマウンドに立つんだ」。有言実行の男は今夏、届かなかったマウンドに立った。大会最速の152キロ右腕として、あの日見た高橋光と同じ栄冠を手にした。

 課題のスタミナと制球力を克服した投げっぷりは、同校OBの江川卓氏が絶賛したほど。単独指名に成功した渡辺SDは「迷いはなかった。球団として全会一致でした」。細身の体形から、強気な投球で勝利に導くスタイルはエース岸にも通じる。大学、社会人まで投手豊作といわれた今ドラフトで、最大級の評価を受けた。

 会見前の不安は吹き飛び、未来への青写真が広がる。ふと思い出されたのは野球を始めた小学生の時、テレビで見た光景だ。「西武の日本一を覚えています。岸さんや涌井さん、若手の選手がすごく活躍していた。若手が勝利のカギになれるチーム。自分も高卒ですが、早く勝利に貢献していきたい」。ベンチ外から日本一に駆け上がり「勝ち方」を知った今井が、新生ライオンズの支柱になる。【鎌田良美】