広島が幸運を生かせず逆転負けした。4回2死一塁、エルドレッドの打球が二遊間後方、中堅前に上がった。お見合いとなり、カバーに走った右翼手近藤の失策を誘って先制した。ところが、その後は拙攻続き。“神ってる”流れも失い、終盤のアーチ攻勢に屈した。2勝2敗の五分となり、緒方孝市監督(47)は「勝って帰る」と決意。第6戦(29日)から戻る本拠地マツダスタジアムで決着をつける。

 敵地札幌ドームで連敗を喫し「内弁慶シリーズ」の様相を呈してきたが、広島緒方監督の表情は沈んでいなかった。監督就任2年目。期待されながら思うように勝てず、苦しみ抜いた昨季から今季は大きく成長している。「負ければ自分の責任」。昨季努めてコメントした言葉は、今、自然と口をつく。だから前向きなセリフも出る。

 「とりあえずタイやね。これで2勝2敗ですよね。明日(27日)しっかりと戦って、勝って、広島に帰るということです」

 ファンで真っ赤に染まる地元マツダスタジアムに戻っての第6戦が確定。闘志は少しもなえていない。

 「チャンスがあったことはあったよね。数少ないながらもね。そこで打って点を取りたかったけど。中盤までは打てないながらも四球をしっかり選んで、なんとか得点圏に進めながらだったし。でも向こうも粘り強く投げたしね」

 2点を追う9回は日本ハム宮西を2死満塁にまで追い詰めた。8回にジャクソンを投入した際は指名打者を解除するワザも使った。得意の足技でも攻めた。2回1死一塁で鈴木が二盗を成功。4回には丸も盗塁を狙った。日本シリーズ4戦目まで6盗塁。ただ、得点は相手失策でもらった1点だけ。あと1本が出ない11残塁だった。

 終盤のミスも痛かった。8回、先頭新井が四球で出塁。すかさす代走赤松を投入した。無死一塁、鈴木は初球を空振り。直後、河田三塁ベースコーチとサインを確認し合うようなシーンがあった。結局、バントを試みたが失敗。最後は右飛に倒れた。

 「作戦面のことは、ええじゃん…。このシリーズ、見えないところで勝負をかけるのは多少なりともあるし。しっかりとミーティングでも確認してるけど、こういう大舞台のところで若さが出るというか、そういうところも、ひっくるめて、こっちの責任だからね」

 何があっても、結果として負ければ自分の責任。腹をくくった指揮官は、悲願の32年ぶり日本一へ少しのひるみもない。【高原寿夫】