連敗がなんだ。「SMBC 日本シリーズ2016」第4戦(札幌ドーム)で、広島今村猛投手(25)が第1戦から4試合連続登板。1回を無安打無失点に抑え、4試合連続無失点とした。7度目の日本シリーズで、登板数の球団トップは86年津田恒実の5試合。2勝2敗のタイとなった今後の戦いで今村が「炎のストッパー」超えを果たせば、悲願の日本一が近づいてくる。

 勝ち越しの走者を二塁に置いても、マウンド上の今村は涼しい表情を崩さなかった。同点の7回。遊撃田中の失策から招いた1死二塁。1番岡をフォークで空振り三振を奪っても、表情をまったく変えず、胸元のユニホームを引っ張り、汗を拭った。続く西川も真っすぐとフォークのコンビネーションで投ゴロ。前の6回、同点に追いつき勢いづいた日本ハム打線を寄せ付けなかった。

 「ここまできたら、しんどいもきついもない。投げろと言われたところで投げる準備はできているし、投げるつもりでいます」

 今シリーズ、投げない試合はない。初戦から4連投は、広島では日本シリーズの登板数で津田の5試合に次ぐ2位タイ。8回に登板し、レアードに痛恨の2ランを浴びたジャクソンも4連投だが、今村はまだ1点も許さぬ好投を続けている。今季「この球があるから何とかやって来られた」と自信を深めたフォークで、ことごとく日本ハム打線のバットを外した。

 札幌に乗り込んだ24日の夜、中継ぎ陣を誘って食事会を開いた。決戦を控えたこともあり、長い宴にはならなかったが、絆は深まった。まだ25歳の今村だが、実績では中継ぎ陣の中で群を抜く。守護神中崎も「気付いたことがあると声をかけてくれる」と信頼を寄せる。

 シーズンでは今季、チームトップタイの67試合に登板した。状況を問わず投げてきた右腕に、畝投手コーチは「投手陣のМVPは今村かもしれないな」と高く評価する。その献身ぶりは日本シリーズでも変わらない。シリーズ前に「7イニング? 僕は14イニング投げるつもりです」とサラリと言った。全試合ではなく、全試合で2イニング投げる覚悟を決めていた。

 好投も実らずチームは敗戦。2連勝から2連敗でタイに持ち込まれた。それでも今村は「任されたところで投げるだけ」と最後まで涼しい顔を崩さなかった。追い込まれても、頼れる右腕は動じない。【前原淳】