<広島4-9阪神>◇23日◇米子

 ミスターマルチのバットがまたもや火を噴いた。阪神の3番マット・マートン外野手(28)が広島戦で今季4度目の4安打を放った。打率こそ3割5分1厘のリーグ2位だが、マルチ安打は単独トップの27度目で、通算安打でも95本の単独首位に躍り出た。満塁アーチを打った22日に続く連続4打点でチームも大勝し、首位巨人に再び2・5ゲーム差に迫った。

 赤毛をなびかせる夜風が気持ちよかった。9回、2点にリードを広げてなお1死三塁。マートンが大島に代わってマウンドに上がった岸本の練習投球をチェックしていると、ネクストバッターズサークルに大木通訳がデータを手にしてやって来た。「オープン戦最後の試合で(岸本と)対戦していたのを覚えていたんだけどね。ただ、あそこで打たないとオオキサンが仕事をしていない、となるだろ?」とニヤリ。初球の高め142キロ直球を逆らわずに右翼線へ運んだ。ダメ押しの適時打となった。

 得点圏で走者を置いた場面で4安打4打点。2点リードのまま手詰まり状態が続いていた7回1死二塁では、引っ張って左翼線二塁打で貴重な追加点もたたき出していた。22日広島戦は延長11回に右翼席へダメ押しの満塁本塁打を記録。夜9時を過ぎても蒸し暑い米子での2戦で5安打8打点。右へ、左へと広角打法がさえ渡った。

 右手に魂を宿し、家族とともに戦っている。練習、試合用の打撃手袋は黒まみれだ。マジックで十字架に数字、文字を書き込んでいる。左手には聖書の好きな一節の題を書き込み、右手の手首部分には「SMMC」…。一見、暗号のように見える4文字は家族全員の頭文字だ。「3月のオープン戦の時期から書き始めたんだ。(米国)メジャー時代から同じようなモノは書き込んでいたよ」。ステファニー夫人に1歳の長男マイカ君、生後2カ月になる長女メイシーちゃん、そして米国に飼っている小型犬クロエ。毎日、右手からエネルギーをもらい、愛する家族と“戦場”に向かう。

 来日1年で3割を打った阪神の外国人は91年のオマリー(3割7厘)が最後。そのオマリー氏は「日本で成功しようと思えば、変化球を逆方向に打たないといけない。彼はそれができる」と言う。それを証明するかのように今季4度目の4安打で10試合連続安打。打率は3割5分1厘まで上がり、最多安打争いでは中日森野に3本差をつけ、年間217本ペースとなった。「チームメートがランナーに出てくれるおかげだよ」。謙虚な姿勢で、チームに今季最多の貯金8をもたらした。巨人に2・5ゲーム差。赤毛の助っ人に導かれ、虎が上昇気流に乗っていく。【佐井陽介】

 [2010年6月24日8時18分

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