<阪神2-2中日>◇9日◇甲子園
阪神能見篤史投手(31)はふと、マウンド上から右翼席に視線をズラした。割れんばかりの「能見コール」。懐かしい風景だった。1点ビハインドの7回2死満塁、カウント2-2。決め球はフォークだ。中日藤井を空振り三振に仕留めると、冷静に下を向いて一塁ベンチへ。ポーカーフェースが頼もしかった。
「緊張した~」と振り返った130日ぶりの1軍マウンド。初回に先制点を許し制球が定まらない。それでも耐え、調子を上げた。「とにかく最初から全力だった」。3回は3番森野から3者連続三振。6回にも3者連続三振だ。2軍戦での最多球数79を大きく上回る、7回128球を投げきった。9安打を浴びながら2失点。「追いついて、すぐに取られたらアカン」。本人は反省したが、すべてフォークで空振り三振10個を奪う迫力の投球だった。
辛く長い復帰ロードだった。5月2日巨人戦で走塁中に右足甲を骨折。松葉づえの力を借り、4カ月に及ぶリハビリ生活が始まった。虎投の軸と期待されての離脱。「やってしまったことは仕方ないと考えるしかない」。自責の念に苦しみながら必死で前を向いた。
手術を回避して保存治療を選んだ。2度と骨がくっつかない可能性もあった。冷静を装っても不安はよぎる。「もう投げられないんちゃうか」「骨くっつくんかな」。弱気の虫が言葉になると、権田トレーナーに「何言うてんねん」と諭された。できることに専念した。加圧トレーニングに初挑戦して全身の筋力をアップ。金本からは患部治癒を促進するサプリメントを贈られた。「家でもなるべくギプスを付けましたね」。患部の負担を減らそうと軽量化スパイクも試した。
走れない。一時は73キロの体重が5キロ増加。7月12日に第2子となる長男を出産した妻千江子さんは、身重の体でバランスの良い手料理を工夫してくれた。骨を強くするため、食卓に魚が並ぶ毎日。「飽きが来ないようにしてくれて…」。感謝の気持ちを胸に長いリハビリを耐え抜いた。そして、復帰戦でも耐えた。
今後は先発ローテの一員として、フル回転の期待がかかる。次回は16日横浜戦(横浜)で復活星を狙い、23日中日戦(ナゴヤドーム)、中5日で29日巨人戦(甲子園)での先発が予想される。鬼門ナゴヤドームを突破し、Gもたたく。戦線離脱した悔しさは、今から晴らす。【佐井陽介】
[2010年9月10日10時55分
紙面から]ソーシャルブックマーク



