<巨人4-3阪神>◇4日◇東京ドーム
プロ13年目の伏兵が決めて、巨人が阪神にサヨナラ勝ちした。同点の9回無死一、三塁。「松坂世代」の実松一成捕手(30)が、難攻不落の守護神藤川球児投手(30)から、プロ初のサヨナラ打を左中間に放った。1回に3点をリードされる苦しい展開から粘って今季本拠地初勝利を挙げた。
打球は完璧に安打と分かる角度で、左中間に飛んだ。ガッツポーズをした実松は無我夢中で一塁へ駆けだした。「正直、本当に一生懸命だったので覚えていません」。8回守備から出場し、9回無死一、三塁で今季初打席を迎えた。マウンドには球界屈指の守護神・藤川。「勝負してくると思ったので決めてやろうと思った」。速球を2球ファウルした後の3球目。勝負にきたフォークをとらえた。一塁を回ると、笑顔のナインが抱きついてきた。3年ぶりの安打が、巨人では球団初となる球児からのサヨナラ打。「すげーじゃん、オレ。誰がびっくりしているかって、おれが一番びっくりしていますよ」と声を上ずらせた。原監督も「見事な打撃でした。真っすぐ一本で狙っていたんでしょうけど、フォークにうまく反応してくれましたね」と賛辞を贈った。
苦労を表に出さない。98年ドラフト1位で日本ハム入団。06年に巨人に移籍したが、正捕手の座はつかめなかった。阿部が負傷離脱したが、今季は2軍スタート。鶴岡、加藤、2年目市川に1軍枠を取られた。それでも「後悔だけはしたくないので」。練習や試合で集合時間よりも早く来ては、対戦相手の資料を見るなど準備を怠らなかった。課題の打撃向上にも努めた。4月20日に今季初めて1軍に昇格した。
「試合のための準備は欠かさずやろう」。この日も、試合開始6時間半前の午前7時半には球場にいた。脇谷は「本当にうれしい。なかなか試合に出られない中でも早く来て準備しているのを知っています。神様はいるんだなと思いました」と思いを代弁した。
その姿は“師匠”と重なる。今年1月、日本ハム時代からの同僚小笠原と、3年目となる合同自主トレを行った。7時間にも及ぶ練習と寝食をともにし、2000安打目前の先輩から何でも吸収しようとした。最終日には「なんとしても結果を出して、恩返ししたいと思います」と一本締めした。この日、大記録へ残り1本となる安打を放った小笠原から「良かったな」と声を掛けられた。「重いひと言です」。努力を見続けてくれた“師匠”の言葉を、喜びとともにかみしめた。
帰り際、手には人生初のサヨナラ打を生んだバットが握られていた。「みんなが記念だから持って帰れって言うから…。初本塁打の球もないですし、あんまりこういうのはとっていないので」と照れた。連日、注目される小笠原をも「今日は実松でしょ。頑張ってるからね」と満面の笑みにさせた。プロ13年目の30歳は、それほどの大仕事をやってのけた。【浜本卓也】



