横浜は23日、昨年限りで楽天を戦力外となり無所属となっていた中村紀洋内野手(37)の獲得を発表した。低迷するチームの起爆剤として、経験豊富な大砲に目をつけた。この日、兵庫・西宮市内で日課の打撃練習を行った中村は、前日22日に横浜から「野球をやらないか」と打診され、即答した経緯を明かした。「とにかくチームのためになりたい」と、92年近鉄からの日米プロ生活集大成の地を横浜にする決意だ。今日24日の入団会見に臨むため、この日夜には横浜に入った。

 再びバットを握る日が巡ってきた。中村は兵庫・西宮市のビーコンパーク・スタジアムで日課の練習を終えたあと、夜に横浜に移動した。横浜から連絡を受けたのは22日。加地球団社長から「野球をやらないか」とラブコールがあった。むろん、即答。戦力補強期間内はプレーする希望を持ち続け、練習を続けてきただけに、心身ともに整えての一発回答だった。

 中村

 本当に感謝しています。補強期間いっぱいはあきらめずにいようと思っていましたが、正直厳しいかなとも思っていました。(具体的な起用法については)これからです。でもどんな形であれ、チームの役に立てればと思います。

 楽天から戦力外通告を受けた昨秋。すぐに同スタジアムで孤独な練習を開始した。かつては5億円の年俸を誇り、球界の顔だった男がマシンを相手に黙々と打ち込んだ。新天地は見つからず、野球をやれるあてのない孤独なトレーニング。だが練習を続け、健在だという姿勢をアピールし続けてさえいれば、再び打席に立つ日は巡ってくる。そう信じての毎日だった。

 横浜は中村の動向に注目し続けていたという。「ずっと練習していたことや、東日本大震災が起きたときに救援物資をお届けしたことなどを報道を通じて知って下さっていた。自分が(野球で)頑張れば、また大変な思いをしておられる東北の方への力になれるかもしれない」と、中村の声も弾む。

 兵庫県内の自宅に家族を残し、単身赴任で横浜へ。「子供たちはぼくの前では野球の話をしないよう、ずっと気を使ってくれていた。そんな思いをさせて悪いなと思っていました。あと何年野球をやれるかわかりませんが、自分の精いっぱいの力を出せるように頑張ってきたい」。92年の近鉄1年目からドジャース-オリックス-中日-楽天と続いた波瀾(はらん)万丈の野球人生。37歳の強打者が、集大成の地を横浜に求める。【堀まどか】