何が起きたのか気がついたのは、二塁を踏んだ後だった。横浜内藤雄太外野手(27)は3回1死満塁のチャンスに中日川井の外角直球をたたいた。逆方向へ力強く伸びる打球。「野手の頭は越えると思いましたが、フェン直だと思った。三塁の塁審が腕を回してるのを見て、ようやく本塁打だって分かりました」。まさかの当たりはセ・リーグ今季初の満塁本塁打だった。

 この日は3度も満塁で打席が回ってきて、ことごとく打ったが、これまで満塁では1本も安打を打ったことがなかった。「得意な意識はまったくなかった」。しかも昨年から2年越しに3打席連続三振中。そのうっぷんを晴らすかのように1回2死満塁では右前適時打を放ち、6回無死満塁では中犠飛。1試合6打点は自己最多。昨季2打点の男が、1日にしてその3倍の打点を稼いでみせた。

 試合前のミーティングで中日は左腕の川井が予想されていたにもかかわらず、左打者の自分を起用してくれることを知り、意気に感じていた。「先輩たちが満塁で回してくれた。練習以上のものが出せました」と興奮を隠せなかった。満塁弾だけでなく、猛打賞もプロ入り初だった。

 開幕戦では中日相手にサヨナラ打を打った。今季の内藤は底知れない何かを感じさせるほど当たりまくっている。その開幕戦の翌日には食あたりにまであたった。「エビフライかなあ」とおなかをさすっていた。中日から打った意趣返しだったとすれば、今回はもっとエビフリャーには注意しなくてはならない。【竹内智信】