<オールスターゲーム:全パ4-3全セ>◇第2戦◇23日◇QVCマリン

 全セの巨人坂本勇人内野手(22)が偉大な先輩たちへの仲間入りを果たした。5回西武牧田から、出場4回目にして初めて夢の舞台でアーチをかけた。合計3安打を放ち、球宴での本塁打&猛打賞は長嶋、王、松井らに続く球団史上7人目の快記録だ。

 会心の笑み、苦笑い、満面の笑み。坂本が、いろんな笑顔をみせた。

 まずは会心の笑みだ。5回1死。マウンドは西武牧田。初球は「牧田クイック」だった。かつて楽天山崎を仰天させた、ほとんど間合いのない超クイックモーション。サブマリン投法から浮き上がる球は、高めのボールとなった。

 走者のいない状況の中、想定外のモーション。衝撃的な初球の入りに、坂本は思わずのけ反って笑ってしまった。だが、タイミングを狂わせる敵の目的に惑わされない。2球目、下半身をぶらさず、キッチリと迎えて、真ん中に入る直球を振り切った。左翼席への球宴初アーチ。一塁ベースを踏む直前、こぶしを握り、会心の笑みを披露した。

 試合のクライマックスには、苦笑いだ。2点を追う9回2死二塁。この日3本目の安打は1点差に詰め寄る適時打となった。次打者ヤクルト・バレンティンは右中間への二塁打。一塁から一気に本塁へ-。同点、さらに逆転ならば、MVPの可能性も浮上する。だが、しかし!

 三塁ベースコーチの内海が毅然(きぜん)とストップをかけた。

 三塁ベースを抱えるようにしゃがみ込む坂本。二塁ではバレンティンが「なぜ走っていないんだよ~」と、言わんばかりに指を回し、イタズラっぽく坂本を見つめていた。突き刺さる視線を感じたのか、坂本は内海とバレ砲を交互に見て苦笑いだ。ラミレスは「内海は投手だから大丈夫だけど、野手だったら罰金だね」と、ジョークながらもダメ出し。坂本は「微妙なタイミングでしたね」。仮に走っていたら本塁アウトかもしれないと、先輩内海を気遣う優しさをのぞかせた。

 球宴で本塁打を含む1試合3安打以上を記録した巨人選手は過去6人しかいない。セ3得点のうち2点をたたき出し、敢闘選手賞の100万円をゲット。ベンチの原監督を「勝負強いね」と、うならせた。締めは、MVP受賞の西武中村とお立ち台で満面の笑み。「楽しかったですね。(本塁打を)打てたのがよかったです。(おかわり君は)マネできないです。スゴイです」。MVPは逃したけれど、ヒーローは意気揚々と仙台へ向かった。【金子航】