<広島2-4巨人>◇28日◇マツダスタジアム

 意地の殊勲打だ!

 巨人坂本勇人内野手(22)が、2-2の延長10回2死一、二塁で、決勝の中越え三塁打を放った。打撃不振で2年ぶりにスタメン落ち。7回の守備から途中出場し、8回2死満塁では空振り三振に倒れたが、巡ってきた2度目の好機で勝負強さを発揮した。勝ちながら順位は中日、阪神に抜かれて4位となる珍現象が起きたが、首位ヤクルトとの差は3・5ゲームに縮まった。

 坂本は闘志を内に秘めていた。2-2の延長10回、2死一、二塁。広島バッテリーがマウンドに集まる間、打席内でスイングのイメージを膨らませた。7回守備から途中出場し、8回2死満塁で迎えた打席では空振り三振。そして、この打席に至る。「その前のチャンスで三振しちゃっていた。何とか内野安打と四球でつないでくれていたので、絶対にかえしてやろうと思った」と、集中力は高まっていた。

 そんな気迫に吸い寄せられるかのように、広島今村の4球目直球が、真ん中やや外寄りに入ってきた。「完璧に打てました」という一撃は、前進守備の中堅頭上を悠々と越えた。三塁へ到達し、パチンと手をたたいた。決勝の2点適時三塁打に「チームが勝つのが一番うれしい」と、さわやかに笑った。

 スタメン落ち。ベンチから試合開始を見守ったのは09年7月22日以来だった。「明らかに1番打者として、まったく機能していなかった」と原監督は明快に理由を明かした。その指揮官から、2日前に直接指導を受けていた。打撃練習中、打撃ケージ内に入ってきては、バットで地面に線を引くまでしての熱血指導だった。「ボールの内側を打つということです。バットの出が悪いからだと思います」(坂本)。

 その後、2戦連続無安打と結果は出なかったが、期待は痛いほど伝わっていた。どういう思いでスタメン落ちを決めたかも理解できる。それゆえに「しょうがないです」と冷静に受け止めた。試合前練習ではストップウオッチ片手に外野でタイム走を行うなどして汗を流し、来るべき時に備えていた。

 原監督が「勝負強さという点は勇人は残っていますから」と言うように、得点圏打率は12球団トップの4割6厘。そんな男に、ラストチャンスが回ってくるとは、そういう星の下にいるとしか言いようがない。原監督は「スターティングメンバーを外されて、モヤモヤしているものもあるでしょう。そういったものがあの一打になって、本来の彼らしいね、野球、バッティングを思い出してほしいと思います」と完全復調を切望。坂本も「僕自身もふがいない成績が続いていたので、いいきっかけになれば」と力を込めた。

 順位は4位ながら、首位ヤクルトとは3・5差まで再接近。大仕事をやってのけた坂本だが、笑顔はなく「1戦1戦、集中して頑張りたい」と表情を引き締めた。残り40試合。最大12ゲーム差をつけられ、はるか上空を飛んでいた燕のしっぽが、はっきりと見えだした。【浜本卓也】