<巨人15-3DeNA>◇26日◇鹿児島

 主将の1発で着火した。巨人が今季最多の15得点を挙げて連敗を5で止めた。1回2死三塁から4番阿部慎之助捕手(33)が4号先制2ラン。2回にはボウカーの来日初長打となる二塁打など打者10人で5点を追加した。3回には先発全員安打を達成するなど序盤で試合を決めた。原監督が「種火程度」と表現した開幕から湿りっぱなしの打線が、開幕21試合目でようやく火を噴いた。

 巨人打線の種火に息を吹きかけ、燃えさかる炎としたのは、主将で4番の阿部だった。1回2死三塁。DeNA高崎の高め141キロを強引に引っ張らず、バットを強く押し込んだ。打球は風にも乗り左翼席へ。逆方向への先制2ランに「腕をたたんでうまく押し込めた。いい風にも乗ってくれたね」と自画自賛した。

 主将として一番大事なことは「自分が下を向かないこと」だと言う。「どんなに厳しい状況になったとしても、ロッカーでひと声かけれるかだと思う。『明日、頑張って行きましょう』とか、そういうひと声をみんなの前で勇気を持って言えるかだよね」。2度の5連敗を含め単独最下位。波に乗れない状況でも、チームを引っ張る者としての信念は表し続けていた。

 18日の中日戦前には、不振で苦しむ新外国人ボウカーにきっかけをつかんでもらおうと、順番を変更して一緒の組で打撃練習し助言を送った。24日の練習では、こぶし1つ分、バットを短く持ってティー打撃した。「練習の一環ですよ」。しっかりバットコントロールしながら、ボールを強くたたく意識を自らの姿で示した。「こういう状況だし暗くなっても仕方ない。みんなで声を出し合っていこう、とね」。言葉で、その姿で、進むべき方向へと導くことをやめなかった。

 そんな主将が放った先制2ランは、貧打に苦しむチームの起爆剤となった。2回はボウカーが来日初長打となる二塁打を放つと、打者10人で5点を奪い高崎をKO。3回には先発全員安打を達成し、15安打15得点の圧勝。阿部は「調子がいい人も悪い人も、こういうのをきっかけにしていければいい」とほおを緩めた。

 21試合目で今季初の2ケタ得点。24日に「まだ種火程度。ひと息吹き掛けるだけじゃ、大きくならないかもしれないが、ゆったり燃やしたい」と打線の覚醒を期待した原監督は、主将の1発に「大きい大きい大きい。それも大きいですし、それぞれが持ち味を出せたと思います」と4度の「大きい」で喜びを表現した。

 お立ち台では「最高です!」と鹿児島のファンを沸かせた阿部だが、最後は「勝ち続けるしかない。まだ借金はたくさんあるので1つずつ返していきたい」と結んだ。

 28日から、9連戦。ようやくともした打線の火は、主将で4番の阿部が消さない。【浜本卓也】

 ▼巨人が先発全員の15安打で15点の猛攻。巨人の先発全員安打は昨年8月7日広島戦以来で、15点以上挙げたのは09年8月12日広島戦(○16-5)以来、3年ぶり。統一球になってからは、昨年6月28日横浜がマークした14点を上回るセ・リーグ最多得点となった。巨人が鹿児島で試合を行うのは84年4月17日ヤクルト戦以来だが、前回は3-4で敗戦。鹿児島での白星は、市営鴨池球場で行った52年5月21日広島戦以来、60年ぶりだ。52年は熊本、鹿児島での広島戦に連勝し、その後6月7日阪神戦まで11連勝を記録したが、今回も鹿児島から大型連勝をスタートできるか。