<西武7-4中日>◇5日◇西武ドーム

 もう手がつけられない。西武中村剛也内野手(28)が、中日3回戦(西武ドーム)で3-1の4回、自己最多タイの4試合連続となる10号3ランを放ってチームを快勝に導いた。交流戦前は32試合で1本塁打と苦しんだが、交流戦に入って15試合で9本塁打と驚異的なペースでアーチを量産。5打数4安打の固め打ちを見せ、3試合連続4打点もマークした。出場すら不安視された左膝痛をものともせず、フル出場で存分に大暴れした。

 打てば飛ぶ。それほど今の中村は恐ろしい。2点リードの4回1死一、三塁。中日武藤の2球目を左翼ポール際に大ファウルした直後、3球目を再び左翼スタンドにきれいな角度で打ち上げた。今度は文句なしの本塁打が10号3ランとなって軽々とフェンスを越えた。「最低限、犠牲フライでもいいと。軽い気持ちでいったら入っちゃいました」。自己最多タイの4戦連発をマークした4番は、事もなげに言い放った。

 1発だけではない。1回2死二塁では内角シュートに詰まらされながら左前に同点適時打。3回は1死一塁から左前打で勝ち越し点を呼び、6回にも左翼線二塁打を放った。5打数4安打で3試合連続の4打点。三塁打が出ればサイクル安打だったが「興味ないですね。三塁打より本塁打の方が打ちたい」と中村らしいコメントで笑わせた。交流戦で打率4割、9本塁打、25打点。気がつけば今季通算でも10本塁打、37打点のリーグ2冠に躍り出た。

 直前までは左膝の違和感で出場すら危ぶまれた。4日の全体練習は回避。病院で受けた検査の結果は異常なしだったが、当日の状態を見るまではトレーナーも出場を断言できなかった。薬ぎらいの中村は治療も自然な治癒力に頼るのが通常だが、今回はトレーナーに「頼むから飲んでくれ」と懇願され、1日3回の痛み止めを4日の昼に1回分だけ飲んだ。「変な感じは残っているけど、野球をする上で支障はない。守備も全然できますよ」。試合前の宣言通り、一塁守備も最後までやり通して勝利のハイタッチに加わった。

 渡辺監督は「ベストなコンディションじゃない選手もちらほらいるけど、そういう選手の勝ちたい気持ちが出ている」と主力をたたえた。完全復調した昨季の本塁打王が、記録的な量産ペースでチームをどん底から救い上げる。【大塚仁】