<DeNA4-2中日>◇20日◇横浜

 座禅で生まれ変わった。DeNA梶谷隆幸内野手(24)が逆転勝ちの立役者となった。2-2と追いついた8回2死満塁で代打起用され、左翼線を破る決勝の2点適時二塁打を放った。致命的な守備のミスで2軍に降格させられた間、中畑監督の勧めで座禅にチャレンジ。1軍復帰戦で用意された1打席の勝負で、抜群の集中力を発揮し「座禅の効果が出ました」と喜んだ。

 雑念が浮かんでは消え、消えてはまた浮かぶ。ストレスを抱え、2軍に落ちた梶谷は修行に向かった。都内の駒大キャンパス内にある座禅専用の一室。木目調の壁に向かって、じっと座った。張りつめた空気。心が乱れると、警策(けいさく)と呼ばれる木の棒でバシンと肩をたたかれた。

 梶谷

 いろんなことが頭に浮かびました。何も考えない時もあれば、パッと野球のことが出てきたり。なんであの時、ああいうことになったとか。30分くらいです。足が痛いし、生まれて初めての体験でした。

 恵まれた能力を持ちながら、あまりにもミスが多かった。9日の広島戦。2死満塁で遊ゴロをさばいた石川が二塁封殺を狙ったが、二塁手・梶谷はベースカバーに入らず、二塁走者の生還まで許し、試合が決まった。「大チョンボ。プロのレベルじゃない。愛してやまない選手だけどチームとしてけじめがつかない」と中畑監督は懲罰降格で厳しさを示した。同時に、はい上がるきっかけに座禅を勧められた。

 10日たって1軍に戻り、修行の成果が試される場面が訪れた。同点に追いついた8回2死満塁。直前に金城の守備妨害で、中畑監督が猛抗議。降り続く雨で試合は一時中断し、代打を告げられた梶谷は10分以上も待たされた。集中力が乱れてもおかしくなかったが、心は落ち着いていた。「見ていくといいことがない。代打では特に積極的にいこう」。空振りした後の2球目をたたき、三塁線を破る決勝2点適時打を放った。

 中畑監督は「もともと持ってるものはいい。どう生かすか、わかってくれればと思った。見事だった」とミスを挽回した活躍を喜んだ。梶谷は「ポカが多いので、集中力がついて(心も)整理できたと思います」。自信を取り戻し、穏やかに話す表情にも座禅効果がにじんだ。【柴田猛夫】

 ◆梶谷隆幸(かじたに・たかゆき)1988年(昭63)8月28日生まれ。島根県出身。開星(島根)では3年夏に甲子園出場し、初戦敗退。06年高校生ドラフト3巡目で入団。10年イースタン・リーグ盗塁王。昨年はオープン戦で12球団トップの13盗塁を決め開幕スタメン。180センチ、78キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸1000万円。