<巨人5-3楽天>◇8日◇東京ドーム

 巨人長野久義外野手(28)が忍者になった!?

 0-0の3回2死、二塁走者として亀井の左前打で本塁に走った。タイミングはアウトだったが、捕手の楽天嶋のタッチを2度かいくぐって生還。ヤンキース・イチローが見せるようなアクロバチックな走塁で先制点をもたらした。洞察力にたけ、サプライズ好きの長野らしいプレーだった。チームは阿部の2戦連発の決勝16号ソロで4連勝とした。

 長野が「秘技・2段階滑り」を披露した。3回2死二塁。亀井の左前打で二塁走者として本塁を狙う。左翼島内の好返球はノーバウンドで嶋のミットへ。誰もがアウトだと思った。だが、ここからが真骨頂だ。

 スライディングで嶋の右側を擦り抜け、タッチをかいくぐる。ベースには触っていない。立ち上がると、再び嶋のタッチに襲われたが、腰を引いてよける。そして前傾姿勢になった上半身の勢いを借りて倒れるように左手で本塁をタッチ。忍者のような走塁にスタンドは盛り上がりを見せた。

 一瞬の間に、クロスプレーの流れを読み切った。「捕手の(タッチが)届かないところに滑った。最初のスライディングでは僕もホームを触れない。そこから捕手の動きを見ながらタッチしに行った」。一連の動きは昨季イチローが見せたプレーのよう。長野は「そのプレーは見てました。同じよう?

 いやいや」と控えめだったが、大西外野守備走塁コーチは「真っすぐ滑っていたらアウト。あれはセンス。イチローさんみたいだった」とたたえた。

 日ごろから“かわす動き”をしている。宮崎キャンプで球場の取材エリアを通らずに正面玄関から帰るフリをしたことがあった。その動きを察知した報道陣が動かずに待ち構えると「バレました?」と笑顔。だが、しばらくして再び正面玄関から帰ろうとした。その動きに釣られて、報道陣が玄関に回ると「引っ掛かりました?」と取材エリアに普通に姿を現した。取材もきちんと受けたが、こういう駆け引きを長野は好む。

 日常にサプライズを持ち込むのも好きだ。5月下旬にロペスにゴールデンボンバーの人気曲「女々しくて」を紹介。ノリの良さを気に入った助っ人は本拠地の登場曲に採用し、「長野が教えてくれた。歌詞の意味は知らないけどね。踊りもできるよ!」と笑った。5月25日のオリックス戦で突如、曲が変わった時に場内はあっけにとられた。その演出したのは長野だった。

 原監督も「面白いプレーでしたね。最善を尽くしてくれた」と認めた。打撃でも2安打で「打順も上がるかも」と8番からの昇格を示唆。驚きの術が長野のリズムだ。【広重竜太郎】

 ◆イチローのミラクル生還

 12年10月8日のア・リーグ地区シリーズ第2戦(対オリオールズ)の1回表2死一塁で、ヤンキース4番カノが二塁打を放つと、一塁走者のイチローはホームを狙った。本塁の約3メートル手前にきたとき、捕手にボールが返ってきたが、イチローは走る速度を緩めていたため、フェイントのようにタッチをかわした。さらに再びタッチにきたミットに対し、体を反転させながらよけて右手でベースを触り先制した。またマリナーズ時代の05年5月15日のレッドソックス戦では本塁上のクロスプレーで、捕手の頭上をジャンプしてホームベースにタッチしたが、審判の判定はアウトだった。