<DeNA7-2巨人>◇28日◇横浜

 お立ち台で笑顔がひきつっていた。DeNA井納翔一投手(27)が、同じ新人の菅野との投げ合いでプロ初完投をマークした。リーグ覇者を相手に4安打2失点で堂々の5勝目。にもかかわらず「今日の結果は良かったですけど、昨日したことを取り返せたわけではないので」と神妙だった。

 前日27日の投手練習でのことだった。開始時間が変更になったことを確認せず、約1時間遅刻。すぐに川村投手コーチには謝罪したものの、友利投手コーチには練習終了後まで何も報告しなかった。激怒した友利コーチは、この日の試合前に大説教。登板日でも容赦せず「遅刻も腹立たしいけど、報告なしは社会人として許されない。言い訳をゴタゴタ言う前に、プロは結果で払拭(ふっしょく)してみせろ」と追い込んだ。

 このゲキが効いたのか。立ち上がりから「どこでバテるとか考えず、全力で投げました」と、最速150キロの直球を軸に巨人打線を封じ込んだ。7回2死満塁で迎えた代打高橋由にも真っ向勝負。「とにかく大胆に、高さだけ気を付けた」と外角147キロで左飛に打ち取った。打っても4回の適時打を含む初のマルチ安打を放ってみせた。

 友利コーチは「1人だけ日本シリーズ並みの緊張感だったね。最初からこういう投球ができる球を持っているんだから。珍しくほめたら戸惑っていたよ」と、汚名返上?

 の好投を評価した。

 今季ここまで6勝の三嶋と合わせ、5勝以上のルーキーが2人出るのは大洋時代も含めて球団史上初。さらに9月のチーム12勝のうち、井納が3勝、須田が2勝、三嶋が1勝と入団3年目以下の先発陣が半分の6勝を挙げている。8年連続Bクラスは決まったものの、若手の成長は来季への光明となりそうだ。【佐竹実】