「マイルドだろ~」。腰の張りで出遅れていた巨人杉内俊哉投手(33)が26日、広島との練習試合に実戦初登板し、2回を1安打1失点に抑えた。昨季まではプレート板の一塁側を踏んだが、この日は真ん中に変更。右打者の内角を鋭く突く「クロスファイア」を完璧に投げ込んだ。ボールが荒れても、キレで勝負する「ワイルド投球」から、コーナーへていねいに投げ込む「マイルド投球」へと変わった。

 マウンドから見える景色が、ほんの少し違った。杉内はプレート板の踏む位置を中央に約30センチ寄せて、マウンドに立った。13日に腰に違和感を覚え、調整を一時ペースダウン。慎重にステップアップを重ね、臨んだ実戦初登板で2回を1安打1失点に抑えた。「悪くないと思います。真っすぐの質が良かった」。淡々と並べた言葉の中に、確かな手応えを示した。

 投げたコースと制球力が“30センチの変化”を物語っていた。投じた26球のうち、17球が右打者の内角、左打者の外角への、いわゆるクロスファイアだった。2回、右打者の小窪へは寸分の狂いもなく内角へ切り込み、見逃し三振。立ち位置を変えたことで、「視野が広くなった」とコースへの制球が格段に良くなった。

 威力も十分だった。1回は丸、菊池から力のある直球でファウルを打たせ、丸は外角スライダー、菊池は内角直球で連続空振り三振。スピード表示は最速138キロでも、打者の手元で感じる体感スピードとボールの力は完全に勝った。「真っすぐがファウルになれば、有利なカウントを作れる。去年のこの時期にはなかったですねぇ」と最高の感触をかみしめた。

 原辰徳監督(55)は「気分よく放っていて、いい状態ですね。順調だと受け取っています」と評価した。今季は移籍後初の開幕投手を目標に掲げ、200イニングにも照準。昨季、楽天との日本シリーズで2敗を喫した悔しさも胸に残る。「今年にかけるという気持ちもある」。経験も実績もある杉内が決断した30センチの変化に、今季にかける覚悟が垣間見えた。【久保賢吾】