<中日2-3広島>◇28日◇ナゴヤドーム

 中日谷繁兼任監督(43)は痛恨の黒星発進となった。10回に守護神岩瀬が打たれてジ・エンド。それでも指揮官に暗さはなかった。打ってはエース前田健から2点を先制し、投げては川上が6回2失点と大奮闘。12球団最年少監督は「ドラゴンズらしい野球ができた」と前向きで、今日2戦目に兼任初白星を目指す。

 最後は選手谷繁のバットが空を切った。延長10回、一打同点の好機に三振ゲームセット。その直前には守護神岩瀬が勝ち越しを許し、谷繁兼任監督の初陣は黒星となった。「何とかもう1点というところで、取り切れない試合でした。これが野球じゃないですか」。広島を上回る9安打を放ちながらの逆転負けに悔しさをにじませた。だが青年監督に暗さはなかった。

 「終始、うちの流れで進んでいった。同点にされても流れは広島に行ってなかった。こういう試合を続けていけるように、負けはしたけどドラゴンズらしい展開はできたと思う」

 打っては昨年1度しか勝てなかったマエケンに、序盤から食らいついた。初回に新4番平田がボテボテの三ゴロに全力疾走してタイムリー内野安打。「執念野球のスタート」(平田)で先制点をもぎ取った。続く2回には新6番和田が300号王手のソロだ。そして追いつかれた直後の6回には、選手谷繁が中前へ勝ち越しタイムリー…。だがこれは間一髪本塁アウトとなり、兼任監督は感情むき出しで悔しがった。それでもオープン戦12球団最低得点の打線が大変身。日本を代表するエースを苦しめた。

 投げては開幕川上が捕手谷繁のリードに応える好投で5回まで0封。「回を追うごとに良くなった」元エースが、マエケンと互角以上に渡り合った。6回に同点2ランを浴びたが、昨年1度戦力外になった男が予想以上の大奮闘。谷繁監督が「チームがはい上がる」象徴とした右腕が、期待通りチームに勇気を運んだ。その後、岡田、田島、福谷が0のバトンをつなぎ、最後は岩瀬が打たれたが、中身のある大激闘だった。

 「テレビで見ている人に伝わるぐらい気迫を出して戦ってくれ」。監督は開幕前日のミーティングでそんなゲキを飛ばした。そしてナインは、気迫を全面に勝利を目指した。負けても手応えはある。「3時間40分ですか。ものすごく速かった。あっという間でした」。兼任初采配をそう振り返った指揮官は、どこまでもポジティブ。今日2戦目こそ初勝利だ。【松井清員】

 ▼谷繁が28日広島戦(ナゴヤドーム)に出場して実働26年となり、野村克也と並んでプロ野球4位となった。最長は工藤公康29年。セ・リーグ最長は山本昌27年。なお谷繁は89年のプロ入り(当時大洋)以来26年連続で公式戦に出場しており、これは工藤29年(82~10年)中嶋聡27年(87~13年)に次ぎ、歴代3位。

 ▼中日の開幕戦での延長戦は、08年3月28日広島戦に2-2で引き分けて以来6年ぶり。2リーグ分立後8度目で、通算1勝4敗3分けとなった。