<ロッテ1-3日本ハム>◇31日◇QVCマリン

 長いトンネルを抜けた。日本ハム斎藤佑樹投手(26)が、12年6月6日広島戦以来、実に785日ぶりの勝利を挙げた。今季4度目の先発となったロッテ戦で6回6安打1失点7奪三振で、チームを4連勝に導いた。かつて甲子園を沸かせたスターが、高校野球真っ盛りの季節に復活の白星を挙げた。

 斎藤が、勝った。「2年間、本当にお待たせしました」。3者凡退は6回だけ。5回までの再三のピンチも粘った。「正直、こんなにつらい野球を続けるのかと思うと、しんどかったですけど、今日はすごくうれしいです」と、笑顔がはじけた。

 泥臭く、絶望からはい上がった。12年11月の日本シリーズ第5戦で登板後、右肩関節唇損傷を負った。野球を始めて以来、初めての大けがだった。「治療とか行ったら、すぐ治ると思っていた」という。名医がいると言われる全国の施設も数カ所回った。栗山監督からも紹介されたという。あらゆる手を尽くしたが、痛みは消えないまま昨季は春季キャンプに突入し、まともに投げられなかった。

 メスを入れることも頭をよぎった。球団と相談し、完治の可能性が100%ではない、手術は選択しなかった。保存治療を選択したが、不安はあった。「もし、去年の7月くらいまでブルペンでも投げられないようなら、最終手段として(手術を)考えていました」。中垣トレーニングコーチの熱心な指導もあり、昨年6月22日に2軍戦で実戦復帰。同10月2日オリックス戦で1軍復帰も果たした。1歩ずつステップを上がっていく裏には、強烈なプライドが土台にあった。

 早実時代の06年夏の甲子園で全国制覇。早大では東京6大学リーグ史上6人目の30勝、300奪三振を達成。4年時に明治神宮大会も制して大学でも日本一になった。「高校、大学といい成績を残してきた。だからプロ野球でも、いい成績を残したい。そこは、強く思っていました」。今季は2年ぶりの開幕ローテ入りも不調で4月に降格。2軍でも結果が出ない日々も続いたが、腐る理由はなかった。歩んできた野球人生が、自分を奮い立たせた。

 再出発の1勝は、プロ初勝利の相手と同じだ。11年4月17日ロッテ戦(札幌ドーム)は5回4失点で勝った。「こんなに簡単に勝てるんだと思った。でも、今日は何とか6回1失点。そんなに簡単にいかないんだと思った」。次回登板は未定で今日1日に抹消されるが、つらい過去を振り切った。「これから僕の第2の野球人生が始まります」と高らかに宣言した。【木下大輔】◆斎藤復活への歩み▼12年11月1日

 日本シリーズ第5戦で初登板。2回4安打2失点も右肩関節唇損傷を発症。▼13年2月1日

 3年目で初のキャンプ2軍スタート。▼同6月22日

 2軍のフューチャーズ戦(鎌ケ谷)で実戦復帰の先発。2回1安打無失点。▼同10月2日

 オリックス戦(札幌ドーム)で12年10月5日楽天戦以来の1軍先発も5回途中5安打6失点。▼14年2月1日

 2年ぶりにキャンプ1軍スタート。▼同3月29日

 オリックス戦(札幌ドーム)で先発。6回9安打4失点で黒星。▼同4月10日

 楽天戦(札幌ドーム)で先発し2回途中2安打4四球で降板。▼同4月11日

 2軍降格。▼同7月5日

 2軍の西武戦(えんがる)で5回3安打無失点7三振と好投。▼同7月9日

 1軍再合流。▼同7月12日

 ソフトバンク戦で約3カ月ぶりに登板。5回4安打1失点と好投したが勝利は逃す。▼同7月31日

 ロッテ戦で今季4度目の登板。6回6安打1失点で785日ぶり勝利。