<セCSファイナルステージ:巨人1-4阪神>◇第1戦◇15日◇東京ドーム

 阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が4番の働きで、チームが初めて立つファイナルステージの舞台で初戦白星をもたらした。1回に2ランを左翼席へ運ぶと、3回にも右前適時打を放ち、3打点で引っ張った。試合前まで今季の東京ドームでは、打率3割4分1厘、4本塁打、12打点。「大好きな球場」と話していた通り、大暴れした。CSファーストステージの2試合では1点しか奪えなかった雰囲気をがらっと変えてみせた。

 優良助っ人の弾道が勝利への号砲だった。1回、1点を先制した直後だ。鳥谷が二塁に立ち、4番ゴメスが打席へ。カウント1-1からの3球目。内海が投げた外角チェンジアップを見逃さなかった。両腕を思い切り伸ばして、インパクトだけで捉えた。低空ライナーで瞬く間にスタンドイン。狭い東京ドームの恩恵を受ける2ランになった。

 「自分としては打てる球を積極的に行ったよ。チェンジアップが浮いた感じだった。打った瞬間はライナーだったから、客席に届くか分からなかったけど、本塁打になって良かったね」

 CS初アーチで、ファイナルステージ初戦の初回に3点を奪った。今季は109打点を挙げてリーグの打点王に輝いた。宿敵巨人との大一番で、点取り屋の本領を発揮した。来日1年目のシーズンは最終盤。信頼できる仲間ができた。戦友との絆が心の支えだ。

 日本中を遠征し、10月にはフェニックスリーグでプレーするため、宮崎に行った。7日、伊丹空港への帰路。飛行機のシートに座ると大きな体を丸くして小さくなっていた。小型機が苦手なのを知ると、近くにいた福留、関本、鶴岡らが笑ってはやし立てる。「今日のパイロット、ルーキーらしいぞ!」。聞くや、目を丸くして「本当なのか…」と息をのむ。冗談だと知ると、ホッとして苦笑い。いまやナインにイジられるキャラクターで愛される。

 グラウンドでは同僚とともに全力を尽くす。3回無死一、二塁。内海の初球外寄りシュートをバットの先端で捉え、渋く右前に落とした。リードを広げる適時打を放ち、この日は3打点の大暴れだ。守備でも体を張る。7回無死満塁。セペダのゴロを捕って一-捕-一の併殺を完成させた。その直後、代打井端の飛球も二塁上本を制して捕った。全身から気迫があふれていた。ゴメスは言う。「明日も同じように一生懸命プレーするよ」。試合後、都内の宿舎に帰れば愛妻と長女が待っていた。つかの間の休息をへて、再び戦場で命を燃やす。【酒井俊作】

 ▼4番ゴメスが初回の2ランを含む2安打、3打点。現12球団のうちDeNAを除く11球団がプレーオフ、CSに出場しているが、今年の1S終了時での4番打者の本塁打数を出すと

 

 中13本

 巨4本

 ヤ2本

 広1本

 神0本

 日8本

 西6本

 ロ5本

 ソ4本

 オ4本

 楽4本

 プレーオフ、CSで4番打者に1発が出ていなかったのは阪神だけ。昨年まで阪神の4番打者は通算33打数6安打、打率1割8分2厘の3打点と、さっぱり。4番打者が1試合に2打点も阪神では初めてだった。