広島が佛教大・大野雄大投手(4年=京都外大西)の「1位評価不変」を確認した。担当の宮本洋二郎スカウト(68)が20日、滋賀・草津グリーンスタジアムで、佛教大と京園大とのプレーオフを視察。左肩棘下筋(きょっかきん)炎症を抱えた大野は登板出来ず、チームは優勝を逃した。ただ近年のドラフト候補屈指の左腕という素材判断もあり、かねて公表済みの5人の1位候補からは外さず。即戦力補強を望む現場の意向から1位は早大・大石達也(4年=福岡大大濠)か中大・沢村拓一(4年=佐野日大)が有力視されるが、その場合でも大野は外れ1位の筆頭候補としてマークを続ける。

 この秋マウンドで1球も投げなくても、広島の高評価は変わらなかった。「大野君の場合、投げようが投げまいが、抑えようが打たれようが、うちの評価は変わりません」。宮本スカウトはそう断言した。

 苑田スカウト部長は18日のスカウト会議後も「Sランク評価の5人(沢村、大石、斎藤、福井、大野)に関しては変わらない」と語っていたが、この日の大野の状態を見た担当スカウトも評価不変を明かした。最大の理由は「こんな左投手にはなかなか出会えるものではない」という素材への信頼。球威に加え、右足がしっかり着地してから左腕を振り下ろしてくる投球フォームが打者には打ちづらいと、宮本スカウトは指摘し続けて来た。その思いは変わらない。

 今年「セの投手3冠」に輝いた前田健を獲得した06年も、宮本スカウトは大阪・富田林市のPL球場に通い詰めた。大野の場合も同様。京都・南丹市のグラウンドでマークを続けてきたからこそ、他球団が判断に迷う左肩の現状にも明るい兆候を見いだした。「(16日からの)最終節の直前にグラウンドで見たときと今日のキャッチボールを比べた際、短期間で距離が伸びている。いい方向に向かっているんだと思います」と指摘した。

 ただ投手のコマ不足に泣いた現場は、即戦力の獲得を熱望。野村監督は「即戦力投手を取るつもりだが、競合する可能性が高いと聞いている。大野さん(ヘッド兼投手コーチ)とも、今季は6回以降に逆転された試合が30試合くらいある。それを半分に減らせたらどうだったのか、ということも話している」と語っており、1位指名は早大・大石か中大・沢村が本命視される。だがともに競合必至で、クジを外した場合の最有力候補は大野になる。苑田スカウト部長は「大野は投げていないので、ドラフト前日まで担当スカウトがどういう状態か情報を集めて判断しようと思う」と語る。一本釣りを狙う他球団の戦略調査も含め、大野マークを続けて行く。